2009-12-27

『構造政策の理念と現実』(安藤光義/農林統計協会)



正しいのはどっち?



政策効果を検証した一冊。
取り上げらているのは農業経営基盤強化促進法で、まさに課の所管なんですね。

「構造政策」とは、いわば「農地をまとめていきましょう」という政策のこと。
小さな面積で農業をやっても効率が悪く、儲からない。儲からないままだと誰も跡継ぎが生まれず農業全体が立ち行かなくなってしまう。だから儲かる農業のために大きな面積で農業が行われるように、農地を地域の中心人物に集めていきましょう、というのが構造政策の論理。「構造」という呼び名が与えられているのは、農地は有限なので、だれかに集める=だれかが手放す、という全体の構成にかかわるものだからでしょう。

「農業経営基盤強化促進法」とは、市町村ごとに、この「構造政策」を進めるための手段を与えた法律で、その法律について政策の効果がちゃんと出ているのか、ということを具体的な事例を元に検証し、提言しているのが本書。

で、内容は

①もはやコメが儲からない以上、大規模に耕作したって儲からない。だから儲かるために土地を集めましょう、という仕組みは意味がない。(構造政策と経営体育成政策との乖離)
②地域で農地をまとめて「儲かる」仕組みを作ろうと促しても、地域の人は農業を維持しようと思っているだけで、儲けようとは思っていない。(集落営農の目的の変質)
③都市農地では、相続税対策が一番の問題。

という感じ。

言われていることはもっとも、な気がする。
振興行政って、難しいですけどね。









『ルワンダ中央銀行総裁日記』(服部正也/中央公論社)



なんと、復刊されました。



 もう4回ぐらいレビューしている本書ですが、何気なくアマゾンを調べていたら、同じタイトルが2つ。。。待てよ・・・と思ったら案の定復刊されていました。いやー名著はやはり残っていくものなんですね。

見知らぬ国に一人で乗り込んでいって、経済復興計画を作り、実際に復興させてしまう凄さ。
農民、商人、役人、政治家、ルワンダ人、インド人、ベルギー人、アメリカ人・・・あらゆる立場から話を聞き、1つの物事に対する異なる見解を1つの論理にまとめていく想像力。発想から政策立案が直結する鮮やかさ。政治への配慮と戦略。

「なんで役人になったの?」の30%ぐらいはこの本のおかげな気がしています。

以前は絶版で、アマゾンでしか買えなかったのですが、これで書店でも買えるようになりました。もう一冊ぐらい買おうかしら。笑

やはり、目標ですね。




2009-12-19

『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』(木村元彦/集英社インターナショナル)



「無数にあるシステムそれ自体を語ることに、いったいどんな意味があるというのか。大切なことは、まずどういう選手がいるか把握すること。個性を活かすシステムでなければ意味がない。システムが人間の上に君臨することは許されないのだ」



あああ、こんな人になりたい。

日本代表前監督のイビツァ・オシムについての本。
著者は記者であり、ノンフィクションライター。サッカーだけでなく、オシムの故郷であるサラエボについても詳しいため、彼の半生記を綴りつつ、そこで結晶した人間性を浮かび上がらせています。要はブームに乗って書いただけではなさそう、ということ。


民族が入り混じり、内戦で祖国が混乱する中、数学者や医者の道を蹴り、サッカー選手となったオシム。選手一人ひとりをつぶさに観察しつつ、チーム全体やサッカー界すべてを視野に入れ発言し、行動するその姿は、監督として、人間としての一つの完成体である。



思えば、監督って、自分でプレーしないわけです。実際には何もできないけど、確実に何かしている。その「何か」がオシムの行動なのでしょう。


とにかく、発言が、行動が的確すぎる。無駄がない。よく見てる。自分を知り、相手を知り、未来を知る。

服部正也もたぶん、こんな感じなんだろうなあ、と。

別にサッカーはまったく分からないのですが、こういう生き方をしたいなあ、と思うのでした。







2009-10-25

『食と農の戦後史』(岸康彦/日本経済新聞社)



進化と退化。



食や農に携わる人間としての基本書があるとすれば、間違いなくその一冊に入る本。
前々から読まなきゃと思っていたのですが、結局ついこの間職場の図書館から借りて読了。
・・・読んでいなかったことが恥ずかしい一冊です。

内容は戦後の農と食のルポルタージュ。もっといえば、農業生産・農業政策・食品産業・食卓の60年、という感じ。当たり前なんですが、生産だと「農」で、消費だと「食」なんです。両方の視点から見ないと、現実を見誤るなあと改めて感じたのでした。

印象に残るのは戦後の食生活の変化の激しさ。食品産業・外食産業は未曾有の拡大を見せたのに対して、衰退した(土地利用型)農業と、荒廃した食生活。日本型食生活の復権が叫ばれて久しいですが、結局は昔に戻れ、という話。有機農業の進行とあわせて、いのちの世界はマルクス経済学でないと分からないのかも。。。


個人的なハイライトは農業基本法。「日本の高度成長に賭けた」という言葉の意味は定かではないですが、俺たちが農業を作るんだという意気込みはすごいものがありますね。










『新政策そこが知りたい―「新しい食料・農業・農村政策の方向」の解説』(新農政推進研究会/大成出版社)



農政の源。



今の農業政策の始まりの一冊。
「これまでの規模拡大路線は行き過ぎだ。農業・農村政策は一体的に。」みたいなことを最近はいわれますが、その路線がまさにこれ。


内容としては、「新しい食料・農業・農村政策の方向」(平成4年6月10日)の解説書。
ただしこれが「新政策」として、これまでの農業政策の基本方針となったので、法律でも政令でも通知でもなんでもないんですが、有名なのです。農政を「食料」「農業」「農村」と分けたのはこれが最初という噂。内容としては育成すべき農家像とその数(とそれに対する農地の集積目標)を明確にし、それに対して各種施策を講じるプロセスを築いた点が画期的。


農業者の高齢化、規模拡大の遅れ、貿易自由化への対応、環境問題への貢献・・・食品の安全性や多面的機能の解説など、現在当たり前のように議論されている論点がこのとき既に盛り込まれていたことは、当時の見識がすごいのか、現在の認識に進歩がないのか、どっちなのでしょうか?(執筆者の一人によれば)結構売れたとのことで、当時は画期的な政策だったことは間違いなさそうです。




当時は直接支払い(農家に直接(固定額の)補助金を払う)が時期尚早として見送られていたんですね。。。そのほか農商工連携が「地域内発型農林水産関連産業」といわれていて、なんだか奇妙です。生産調整は議論があいまいですね。


『戸別所得保障制度、そこが知りたい』を出したら、売れると思うんだけどなあ。






2009-10-03

『佐々木かをりの手帳術』(佐々木かをり/日本能率協会マネジメントセンター)



「時間管理が上手な人は悩みが少ない。なぜならば、悩みというのは、長い時間解決できない課題のことを指すからだ」



衝撃的だった一冊。「いくら計画を立てても、行動を起こさなきゃ意味がない。というか、行動以外は意味がない」そんな思いが手帳から読み取れます。

著者の佐々木かをりさんはone of 有名な女性起業家で、2社の社長&2児の母。
もっと有名なのは彼女の考案した手帳

もともと手帳が好きだったという著者。そのうち自作を始め、一時はフランス製の手帳を使っていたそうですが、結局祝日とかの関係で自分で製造・販売してしまったそう。

手帳の設計はいたってシンプル。
・一週間見開き
・30分ごとの欄
・基本、それだけ

毎日のページとか、価値観を明確化するページとか、一ヶ月の予定を確認するページとかメモとか、そんなのは基本的にないんです。だって一箇所になってたほうが見やすいし、何より無駄だから。フランクリンプランナーと比べると、すごく実践的。あれはすごく理論的なんですね。大事なことはわかるけど、コストが・・・。



市販の手帳→フランクリンプランナー→自作→outlook→フランクリンプランナー・・・と行動力がないことを手帳のせいにしてきたのですが、何だかしばらく落ち着きそうです。当然、手帳<<行動、ですけど。


2009-08-16

『チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー』(Peter F. Drucker著,上田惇生著/ダイヤモンド社)



「自分は何か得意で何が不得意か」との問いこそ、ベンチャーが成功しそうになったとたんに、創業者たる起業家が直面し、徹底的に考えなければならない問題である。しかし実は、そのはるか前から考えておくべきことである。あるいは、ベンチャーを始める前に、すでに考えておくべきことかもしれない。


ドラッカリアンを自称してはばからない私ですが、知っていても実践できていないことが多いなあ、と思わされた一冊。

タイトルは変革期のリーダーシップ的な感じですが、内容は「マネジメントとは何か?」に尽きます。別にチェンジが重要なわけではなく、組織の使命に適い、そこで働く人が成長し、社会に何か貢献できればよい。

目標は必ず立てるべし、そしてきちんと反省すべし。
自分からではなく、市場から発想すべし。

組織を考えても、結局自分に跳ね返ってくるのが人間の面白いところなんでしょう。




『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』(大前研一訳、ダニエル・ピンク/三笠書房)



左脳から右脳へ。



単純作業はどんどんコンピュータに置き換わって、わずかに残された人的な労働も発展途上国に流れてしまったとき、そして安くて良質なモノで世の中が溢れてしまい、満たされすぎている現在、僕らは何で稼げばいいんだろう?そんな答えを示した本です。

結論は「新しいことを考える人」(ハイ・コンセプト)と「他人に共感できる人」(ハイ・タッチ)のみが価値を持つ時代になる、ということらしい。

本書の特徴は、それを左脳、右脳という対比でもって示していること。右脳的な発想こそが今後のマーケットで生き残る鍵になり、それは先進国のかつての教育によっては満たされえない領域であるそう。

実用性<デザイン
議論<物語
個別<全体の調和
論理<物語
まじめ<遊び心
モノ<生きがい

てことは農業じゃん?と思うのは私だけでしょうかね。
なんだか元気になれる一冊です。



2009-08-15

『企業参謀』(大前研一/講談社文庫)



「この作業には『徹底的』とか『しつこい』と呼ばれるくらいの努力が必要である」



タイトル通り、企業において、まるで戦場における参謀のように戦略を立案するためのノウハウをまとめた一冊。これを文庫にするのは凄い。
訳書でなくてここまで本格的な本が自分の生まれた年に出版されていたとは、驚きです。。。

感じるのは合理的な仮説検証の重要性とそのための発想力&分析を使いこなすスキルの必要性。他の書籍に比べて、仮説の前提となる分析の記述と手法がかなり多い気がします。・・・というか、はっきりいって全然わかんない。

ああ、仮説って、立てて感覚的に優先順位をつけて実施するんじゃなくて、立てたら分析して、検証してから実施するんだなあ、とよくわかるものの、その分析作業は知的な作業だなあ、と思うのでした。PPMの説明は、すごくわかりやすい。


流れているのは、「戦に勝つのは将が強いからであり、負けるのは将が弱いからである」というリーダー論。国政への応用も書いてあり、確かにこうやったら面白いだろうなあ、と。


印象的なのは、問題はすべて異なり、答えもすべて異なる、という前提。
海外に事例を探すのがもっともらしいような気がしてしまいますが、それは逃げ、なんですね。







『仕事の報酬とは何か』(田坂広志/PHP研究所)



「しかし、その『経験豊かなマネジャー』から話を聞いていると、不思議なことに、『見識』が伝わってこないのです。一つの仕事を通じて『スキル』を磨いてきたプロフェッショナルが必ず持っているべき『見識』や『智恵』が伝わってこないのです。こうしたマネジャーが、なぜ、生まれてくるのか。『反省』をしないからです。」



ずばり仕事の報酬とは「能力」「仕事」「成長」らしい。
昔インターンをしていた会社で見かけた一冊。当時はふーんという感じでしたが、働き始めると読み方が変わるものです。田坂広志さんはNPOのマネジメントなどでよく引き合いに出される方。


①給料や地位は仕事の報酬ではなく、自ら求める対象でもない、結果としてついてくるものである。
②本当の仕事の報酬とは、能力の向上、作品としての仕事の創作、そして人間としての成長、である。
③人間としての成長とは、決して失われない、もっとも価値あるものである。

が骨子で、それぞれ「じゃあ、その3つはどうやって得ていけばいいの?」ということを講話形式で書いてあります。師匠を見つけ、師匠から会話や物事を進めるリズム感、バランス感覚の「呼吸」、仕事に対する「心得」、反省のための「着眼」点を学ぶべき、など単純に具体的な話が書いてあり参考になります。


能力は経験によって作られるものだと思っていたのですが、経験は能力によってもたらされるものであり、能力は心構えと反省によって積み重ねられるものなんだと考えを改めました。

仕事にも、王道はないんですね。









2009-08-08

『孫子』(天野鎮雄訳、注/講談社文庫)



「乱は治より生じ、怯は勇より生じ、弱は強より生ず。治乱は数なり、勇怯は勢なり、強弱は形なり」



だいぶ前に読んだ本ですが、印象は「さらっとしている」感じ。

(中国古典には珍しく?)中心概念がないんです。
あるとすれば勝つという結果のみ。

経験則から、戦争とは何か?から、その戦略や将軍のあり方まで、コンパクトに纏めています。かなり実務的。

「こうすればよい」という経験則の集合。内容は、勝てるかどうかの計算の仕方、戦争のコスト、外交の重要性、戦争における勢い、展開の読み方、相手を欺くこと、相手を知ること、地形(環境)を利用すること、火の使い方、スパイの使い方などなど。

基本的には戦争反対で、やむを得ない&勝てる場合に戦争をする、という思想。

勝てる戦争しかしないというのは、当たり前のようで、あまり当たり前じゃないかも。












2009-07-20

『レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術』(本田直之/東洋経済新報社)




効率的な人生。



レバレッジ・リーディングの著者の三部作の1つ。

①労力:仕組み化して習慣にする
②時間:計画を立てて評価する
③知識:本を読む、まねる
④人脈:環境とアドバイザー

構成はこんな感じ。「暇になったらやろう、では一生できない」はそれなりに納得。

時間の使い方をどう評価していけばいいのかなあ、と思っていたのですが、
①インプット
②アウトプット
③生活
④プライベート(家族)

と分類しているらしい。レベルが違うんですが、参考になりますね。








『もっと効率的に勉強する技術!―1時間の勉強が30分で終わる!』(高島徹治/すばる舎)




「勉強量」よりも「学び方」



「おおおおおお!」と思って、衝動買いしてしまった一冊。
勉強法に詳しいわけではありませんが、王道を行きつつ、なるべく無駄を削いだ勉強法の完成形態、という印象の一冊。というか、考え方がほとんど一緒なので、何だか嬉しくなってしまいました。とはいえ、著者のほうが何段も上なのですが。。。資格を91個も持っている人が資格試験の必勝法について説明してくれています。自分でやってるので説得力と具体性が違いますね。

①計画を立てる
②感度順にこなす
③空き時間を活用する
④インプット&アウトプットを使いこなす
⑤スキルを使う(速読、マーキング、カード)


著者が賢いのは、資格試験をレベル分けして、受かるものだけ受ける、と言い切っていること。勝てない試合はしない、ということでしょう。

基礎が8割という考え方には共感。アウトプットが重要ということはわかってもアウトプットの時間を固定で確保していなかったのですが、必須ですね。

著者によれば、休日に重要なものはカードに書き写して、平日でそれを覚える、というサイクルを重ねることが重要だそう。カード使った勉強を始めようかと思うこの頃です。





『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル』(照屋華子, 岡田恵子/東洋経済新報社)




「会議を持つとき、文書を作るとき、それによって相手にどのようにしてもらいたいのか、どんな反応を引き出したいのか、という期待成果のないコミュニケーションは『独白』でしかない」


「ロジカル・シンキング」といえばこの本、というぐらい有名な一冊。昔から読まなきゃなあ、と思っていたのですが、ようやく購入しました。

内容は3部立てで、

①目的意識の明確化
②MECE
③論理パターンを覚える


構成を一見すれば明らかですが、「ロジカルシンキング」とは、<目的を明確にし、MECEで(漏れなくダブりなく)、既存の論理パターンに則って情報を整理すること(必要ならば相手に伝えること)>なんですねー。

③はPPTの作り方、みたいな感じ。課題に対して、結論があり、それ以下はMECEで、階層別に"So what?"(だから何なの?)"Why so?"(どうしてそうなの?)でリンクしている、という形。課題が問うている内容について論理のパターンは変わりますが、原則はそんな感じらしい。

①では、コミュニケーションの目的は「情報提供」「フィードバックをもらう」「行動を起こさせる」の3つである、と限定しています。内容もそうですが、こういう枠の嵌め方が巧みですよね。






『この人はなぜ自分の話ばかりするのか―こっそり他人の正体を読む法則 (こっそり他人の正体を読む法則)』(Jo‐Ellan Dimitrius著,冨田香里訳/ソニーマガジンズ)




読み方。



原題は”reading people”。著者はアメリカでもっとも有名な陪審員コンサルタント。陪審員には事件とは無関係の、公正な判断ができる人間が選ばれる必要があり、その選定にあたってアドバイスを与えるのがコンサルタント。ですから、限られた時間と情報から、その人を見抜くのが仕事なわけで、その技術を解説した本。

①他人について知る:
 際立った特徴から背景を推測する、
 第一印象の背景を読む、
 環境から人を読む、
 話し方から読む、
 発言より行動を見る、
 例外を知る
②自分を知る:
 他人からどう思われるかを考える、
 質問の仕方を工夫する、
 直感を積み重ねて磨く

なんだかシャーロック・ホームズみたいですね。。。
すべての行動には意味があり、その背景を探ることが人を読むことなのだ、みたいな感じ。
そりゃそうでしょうが、ある一点から解釈を広げていく発想は重要でしょう。木から森を見る感じ。

自分自身の読まれ方も気をつけないといけないというのは、当たり前のようで盲点ですよね。

で、応用編が「SPEED」

S:scan(全体を見る)
P:pare(特徴を取り出す)
E:enlarge(特徴を拡大する)
E:evaluate(集中力を保ちつつ評価する)
D:decide(安全なうちに決める)


人に限らず、いろいろ読めそうですよね。



2009-07-11

『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』(齋藤嘉則,グロービス/ダイヤモンド社)



「わかること」「実行できること」「結果がうまくいく」



いわゆる「問題解決」のパイオニア的な一冊。
構成はシンプルで

①思考:ゼロベース&仮説
②技術:MECE&ロジックツリー
③実施:ソリューションズ・システム

の3つ。こういう本から①②がいろんな本に切り出されていったのだなあ、と考えると何だか不思議な感じがしますね。もともと一緒に使うものなんですからね。


③のソリューション・システムとは、①②で分析した問題に対して、「この問題は解決できるか?」「YES、beacauce...」と、問題が解決できる理由を死ぬほど考えて、上から順に検証していく、というプロセスのこと。

・・・すっごいポジティブなんですね。問題解決というと、何だかどうしようもないものを淡々と分析して、淡々と実施していくイメージでしたが、「どんなスバ抜けた解決策があるかなー」とみんなであれこれ考えて「これでできるのか確かめてみよう」と動きつつ考える感じ。要は問題解決とは、言葉通りの「問題の根源を除去すること」ではなく、「問題の根源を明らかにすることで達成すべき目標を明確にし、目標を達成すること」なんですね。手段をあれこれ考え、日々実践するなら、そりゃ楽しいわ。

「わかること」×「実行できること」=「結果がうまくいく」なんでしょうか。
いずれにせよ、実行できないと意味ないんですね。





2009-07-08

『本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー』(養老孟司,竹村公太郎/PHP新書)





モノは嘘をつかない。



モノで見る文明史、という一冊。
日本を、文明レベルの100年単位のスパンで、水・エネルギーの視点から議論した内容を収録したもの。

モノで見るとは、つまりは自然科学の分野から社会を俯瞰するということ。経済学みたいな、人間のアンケートや経済活動の統計からモデルで帰納的に考えるのではなく、自然の末端のデータから社会を演繹的に構想する、という新鮮さと確からしさ。だって、人以外はみんな嘘をつかないんですもん。

凄く凄く、新鮮。


いろいろとデータを持ち出し、環境の変化から見た日本の未来論をふっかける竹村氏と、すべてに違う視点で同じように応える養老孟司。

こういう人たちの会話って、こんなに凄いんでしょうか。。。
特に養老孟司はやっぱり凄い人なんですね。

生態学、本気でやろうかと思ってしまいます。


『話術!虎の穴―現役アナウンサーが明かすトークのネタ帖』 (三橋泰介/源)




話術に王道なし



研修で、あまりにコミュニケーション力がないことに気づき、購入した一冊。
というか、最近狭い環境にばかりいて、落ちていたんですね・・・と思いたいのですが、そもそも面白い話をすることは苦手なのですよ。


本書はデパートの販売員からトークの面白さに魅せられてアナウンサーになった著者が開発した話術を学ぶ術を教える一冊。別にこれを読んだから瞬間的に会話が弾むわけではなさそうですが、王道のことを言っている印象。何でもそうですね。

ポイントは①「トークとは共感・知識・笑いである」②「アドリブは真似る練習によって作られる」③「集める・気づく・作る、で情報収集を」の3つ。

①「トークとは共感・知識・笑いである」
そのままですね。あとひねりとか、自分を少し落としこめる、とかも有効らしい。もはやどうしようもない。

②「アドリブは真似る練習によって作られる」
奇跡は奇跡的には生まれない、ということですね。自分の仮想師匠を作り、徹底的に真似ることが重要らしい。音から文章にしてさらに音読すると効果的だそうな。確かに。あとはネタを常に自分で試すことが重要。風呂の中や、友人の中で。

③「集める・気づく・作る、で情報収集を」の3つ。
たくさんの情報媒体に日々触れること、日常からネタを拾うこと、ネタを作ること、の3つ。


あとはテレビは5台買えとか、呼吸法から鍛えよ、とか、すごい感じ。笑
いろいろ勉強になります。確かにアナウンサーなら、そこまでするわ。












『図解雑学 論語』(狩野直樹/ナツメ社)



孔子の実像。


文字通り、論語の図解です。思わず古本屋で買ってしまいました。
もともと論語・孟子は持っているのですけど。

内容は論語の抜粋と内容を斟酌したもの。
論語ってそこまで難しいものではないはずなのですから、やっぱり原典をあたるほうがいいですね。。。

15志学
30而立
40不惑
50知命
60耳順
70従心

だったんですね。従心は知らなかった。

論語を読むと「孔子ってアツくて、頭の回転が早い人なんだなあ」と思うのですが、この本は読むと「孔子ってきちんとしていて偉い人なんだなあ」と思う一冊です。







2009-07-03

かぼちゃのチーズケーキ




ハッピーバースデー。


以前はことあるごとにバースデーケーキを作っていたもんですが、最近は作らなくなったなあ、と感慨にふけりつつ、サークルの先輩(といえば先輩)のために作ったもの。

久しぶりすぎて手順を完全に忘れていましたが、チーズケーキは失敗しないからいいですね。

それでいておいしい。下にはビスケット生地を引きましたが、なんだか懐かしくて、自分が一番食べていました。笑

誕生日って、誰にでも年に一度あるんですから、素敵ですね。




2009-06-28

『新自分を磨く方法』(スティービー・クレオ・ダービック, 干場弓子訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)




みずから変化をとりにいく



自己啓発書の凝縮版のような一冊。自分磨き、だけではない。

目的・目標設定、
外的要因:自他へのポジティブシンキング
内的要因:基礎力(学習、健康)

が入っています。

・外見は大事
・愚痴や嫉妬したっていい

というのが他との違い。

こんなの読んでもどう変わるわけではないんですが、「やっぱりそうだよね-」という一冊を手元に置いておきたいという自分に気づいた今日このごろでした。




『日本の農業は成長産業に変えられる』(大泉一貫/羊泉社)




農業は成長産業たりうるか?



部分的には、なりえる、と思います、というのが答えでしょう。


コメ政策を批判しつつ、産業としての農業を肯定する、アゲアゲな感じの一冊。
もっといえば、農水省、JA(全農)、自民党を批判しつつ、経営感覚のある農業経営者を応援する一冊。

つまり主張は

①コメのみが所得源という考え方の生産者や政治や農水省こそが間違っている。超高級米、飼料米、米粉米など多様なコメのあり方を認識して、制度を変えるべき。

②そのためにも参入規制や生産調整など無駄な規制は不要。政治への甘えをなくすことも不可欠。

③その上で、きちんとビジネスの基本に立ち返れば、農業は産業足りうる。


これは本当にその通りで、その上で肯定的な書き振りが素敵です。
ミニマムアクセスや大豆小麦の輸入割り当てにまで話題を広げているのがすごいところ。
この文量で、ここまで現代農政の表層を扱うとは、お得な一冊ですね。

個人的には、農協の普及員をうまく使え、という話に共感。確かに農業を評価・指導できる力は今後の食品産業に欠かせない部分ですものね。

確かに、こういう話をしていかないとなあ、と思う一方、全員が生産だけで儲かるはずはないよなあ、と思うのでした。産業足りえる=儲かる、というのは全体のパイを増やせるのではなく、あくまで退出農家が増えるというプレイヤーの縮小によって、もたらされる残りなのかなあ、と思ったり。食料生産の農業はこうしたスペシャルな経営者に担ってもらうとしても、それ以外の市場で農業という産業の幅を広げる施策が必要でしょうね。






2009-06-14

a sound of coolness

お茶の教室に行ってきました。



久々にお茶のお教室に行ってきました。考えてみればほぼ3ヶ月ぶり。
いろいろ忘れていましたが、まあ許容範囲ということで。

何だか、久しぶりにお茶を点てて、いろいろ考えてしまいました。
最近、人としてちゃんと生きてるのかなあ、とか、人に対して優しくなれてるのかなあ、とか。論理だけの世界にいると当たり前のことを見失う気がします。単純な作業なのですけど、自分自身を見つめなおす機会として、お茶はいいものですね。


今日は「しぼり茶巾」をはじめて体験。
お茶碗に最初から水をいれ、中の布巾を絞ることで、滴り落ちる水の音で涼しさを醸し出す、みたいな趣旨。もののない時代、お客を粋にもてなす知恵って素敵なものです。

来月から、本格的に再開しようかと思います。
まだ3年目ですけど、あと半世紀ぐらいはできるでしょうから。細く長く続けていきますよ。






2009-06-11

『問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」』(斎藤嘉則/ダイヤモンド社)



「政策立案とは、社会の問題『発見』である」



何で、もっと早く読まなかったんだろう。。。

そんな読後感。無駄のない、嘘のない、真似のない、痒いところに手が届く、そんな一冊でした。昔から買おう買おうと思っていて、ブックオフでの運命的な出会いを心待ちにしていたのですが、その瞬間はついぞ訪れませんでしたので。


いわゆる「外資系の問題解決スキル」の本。他所との違いは、本書がその元ネタである(らしい)こと。
本当の元ネタは洋書でしょうが、日本人で、これだけ書けるのは本当にすごい。

テーマは問題「発見」。問題とは理想と現実とのギャップであるなどなど、基本的な認識から問題(つまりは理想)をどう突き詰めていくのかについて、具体的な技術を提示しています。

一番大きいのは4P。Purpose, Position, Perspective, Period。
Purposeとそのほか3つの位置づけがいまいち分かりませんが、目的を定めたら、立場や空間(たとえば、事業領域)、時間で「目的はそれで本当によいのか」を問い続けるべし、とのこと。

問題が見えたら、あとは分析。具体的には

①拡がり
②深さ
③重み

こうエレガントに書かれてしまうと、本当にうれしくなっちゃいますね。笑
これが当たり前じゃないから、ダメなんでしょう。




本書は、類似タイトルの続編。前著が問題「解決」に焦点を当てていたのに対し、こちらは「発見」に注目しています。初めてamazonのマーケットプレイスを利用しましたが、これは便利ですね。ブックオフに無い本は、やっぱりいい本なんですね。


なお、冒頭の言葉は、とある先生から言われたひとことでした。
そうなんですよ、ね。




2009-06-07

a day of obento




お弁当の休日。



先日、職場の先輩から「お弁当の日シンポジウムに行きませんか?」というお誘いが。
これは行くっきゃないでしょう、ということで、勢いで参加。

内容は「お弁当の日を通じた小中学校の食育」。生徒の基礎学力低下を懸念した先生が、その原因が食生活の乱れにあることを突き止め、月一回、お弁当の日を設定し、生徒に自分の手作りのお弁当を持参させた。その結果、食生活に関する関心が高まり、成績も上がる・・・みたいな「ホンマかいな」という内容。

が、感覚的に納得。食事、割と大事なんですよ。

思ったのは、人間の死に様から社会を評価する視点。
何で、どのように、死ぬのか。その原因から社会の問題発見をする。
確かに、ミクロからマクロを考える意味ではGDPよりもまっとうですよね。
食から農業政策考えられないかな。


で、写真はお弁当の具。僕は怠惰なので、週末にまとめて作って冷凍しておくんです。
毎朝そのまま詰めてくるだけ、という適当な感じ。


研修中、同僚(しかも男性)とお弁当トークで盛り上がりました。
彼はmixiブログにアップしているらしいので、僕はこれで。


ちなみに、後ろのタッパーが野菜のマリネ&甘酢漬け。
最近、飽きてきたので、ほかの常備菜を模索中です。












2009-05-31

『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践』(勝間和代/ディスカヴァー・トゥエンティワン)




真面目だなあ。。。



というのが感想。ここまで何でもかんでも○○力にするのもどうかと思いつつ、「あ、これできてない」と思う自分が術にはまっているなあと思うところ。

いわゆる勝間本。過去の著作で、「マッキンゼーにはフレームワーク集みたいなのがあって、毎日眺めていると自然とMECEがわかる」みたいなことをおっしゃっていたので、そんなきっかけで出版された本なのかもしれません。

本書の特徴は、Bloom's Taxonomyを使って、ビジネススキルをステップ別に並べていること。そして、フレームワークが21個紹介されていること。散々探してもフレームワーク集は意外とないので、これは価値のある一冊ですね。


本当に詰まった一冊。あまりに情報がありすぎて、元ネタを知らないと理解できないんじゃないでしょうか。古典をレビューしたい方にお薦めな一冊。


結局大事なのはskillじゃなくてwillだと思うんだけどなあ。。。


で、そのフレームワークがこちら。

①空・雨・傘
事実→解釈→行動

②3C
Campany, Customer, Competitor

③4P
Place, Product, Price, Promotion

④5W1H
What,Why,Who,Where,When,How

⑤PDCA
Plan, Do, Check, Action

⑥顧客分布
何事も、サービス需要者は普及時期ごとに、一定割合で5層に分かれるということ。
innovators:25%
opinion leaders:13.5%
early majorities:34%
late majorities34%
lagard:16%

⑦製品進化のトライアングル
製品の差別化要因はは市場の成熟化に伴い、機能→チャネル→ブランド、の順に移り変わること。

⑧CTQ
経営版のHACCAP。critical pointを見極め、あげる。

⑨戦略キャンパス
戦略の可視化。縦軸にレベル、横軸に競争要因。ブルーオーシャンが分かる。

⑩事業の優先順位付けマトリクス
自社の強み×市場の魅力度

⑪バリューチェーン
製品の流れ。
研究→開発→調達→生産→流通→販売→アフターサービス

⑫所得金額階層数の相対度数分布
世帯所得×世帯数

⑬人口分布曲線
年齢×人口

⑭will×skillマトリクス
will高×skill高:委任
will高×skill低:指導
will低×skill高:激励
will低×skill低:命令

⑮SWOT分析
要素(プラスマイナス)×要因(自社×環境)

⑯five forces
rivalry
the threat of substitutes
buyer power
supplier power
barriers to entry

⑰7S
hard:Strategy, Staff, System
soft:Shared value, Structure, Style, Skill

⑱時間の使い方マトリクス
重要度×緊急度

⑲PPM
市場成長率×市場占有度

⑳VRIO分析
value, rarity, imitability, organization

21水平思考の6つの帽子
fact
emotion
critics
optimism
criativity
over look


メモ


・論理パズルを解く
・日常現象から仮説をつくり、ブログに書く
・水平的思考力を磨く
・フォトリーディングを身に着ける
・統計を読む。
・数で常に考える。
・イメージをカラーにして説明する。
・言葉で説明する
・比喩を意識する
・辞書を引く癖をつける
・インターネットの情報をフレームワーク化する癖をつける
・三毒の追放(怒り、ねたみ、愚痴)





2009-05-30

『日本「復活」の最終シナリオ-「太陽経済」を主導せよ』(山崎養世/朝日新聞出版社)



太陽経済


=太陽光発電のエネルギー供給が中心の社会、です。

何がよいかといえば、二酸化炭素はでませんし、世界中ほとんどどこでも発電できますし、何より太陽なので、無くならない。使えば使うほど希少性が高まる一般的な財の性質に反して使えば使うほど安くなる、という夢のエネルギーが太陽光発電、らしい。

①地域が自立し、地場産業が価値を生み出す日本にする。そのために高速道路を無料にするなど、東京との各種インフラ格差を縮める。また行政の分権も進め、権限・財源を移管。

②日本のカネと知恵と技術でアジアに貢献。具体的には、中国・インド企業に投資する、格差是正の行政運営制度を輸出する、エコ技術を使ってもらう。


やはり①と②はうまくつながらないのですが、基本的に同意見。

日本は円高になったので省エネ国家になったが、中国は人民元がむしろ下がっていたのでエネルギー浪費国家になってしまったというのは、目から鱗の指摘(常識なんですかね???)。

一度話を聞いてみたいですね。



『7つの習慣 最優先事項―「人生の選択」と時間の原則』(Stephen R. Covey,et al/キングベアー出版)



First things first.


原題を翻訳すれば「重要なことから始めなさい」でしょうか。
自己啓発書?のベストセラーである『7つの習慣』をいかに実践するか、という視点で書かれた実践手引き、のような本。

ついこの間まで、フランクリン・プランナーを使っていたのですが、毎日タスクを出して優先順位をつけてこなす日々は、どうも「生きづらい」という感覚があり、原則から攻めてみようとGW中に実家付近のブックオフで購入したのでした。(ちなみに、『7つの習慣』を具現化したものがフランクリン・プランナーなのですね)

で、読んでみて「ああああああ、確かにこういうこと書いてあったなあ」と過去の読書記憶の定着の悪さに愕然としたのでした。で、ポイントは3つ。

①生き方の原則はすでに決まっている
②大きな石から入れよ
③自立から相互依存へ



人間には生きるために4つのニーズがあり、この4つがバランスよく満たされていないと、ちゃんと生きられない。生きるうえでの前提。

・生きること:衣食住。睡眠とか運動とか。
・愛すること:家族、恋愛、友達
・学ぶこと:知識を蓄える、能力を高める
・貢献すること:自分の力を使ってほめられる


で、加えて人間には4つの独特の能力がある。

・自覚:分析力(何が起きているか理解する)WHERE
・良心:価値観(何が正しいか知る)WHY
・自由意志:決断力(何をするか決める)WHAT
・想像力:目標設定の力(何をするか考える)HOW(WHEN)


②そのためには、日々「緊急じゃないけど重要なこと」を行う必要がある。毎日ではなく、週単位で週の計画作成時に時間を確保することが重要。

③で、その結果、自立的な生き方が相互依存の生き方に変わる。大きな違いは、自分の能力を他人のために使うこと。



「原則は決まっている」という考え方が意外でした。というのも人は一人ひとり価値観が違うので、正しさも違うと思っていたのです。が、そういうわけではないんですね。

週単位の目標設定の意義も理解。

最近、かなり自己中心的な生き方になっていて、とてもとても反省していたのですが、それは次のステップの前の1ステージだったのだなあ、と思い、少し安心しました。


ちゃんとウィークリーになってる手帳が欲しい。。。


『生き方―人間として一番大切なこと』(稲盛和夫/サンマーク出版)



「なんまん、なんまん、ありがとう」



京セラ創業者の稲盛和夫が自らの生き方の指針について書いた本。
先日、稲盛さんの本を読んでとても共感するものがあったので、もう一冊読んでみることにしました。

結局「人として正しいことを、常に行いなさい」というだけ、です。


当たり前のことを言うことは簡単ですが、実践するのは難しい。本当に実践したものだけが持ちえる厳しさが文面からひしひしと伝わってきます。会社の経営をする中で、「正しく生きる」ことの意味を再確認したのでしょう。個人的には「思考は現実化するが、そのイメージがカラーで鮮明にならないといけない」と、仮説思考のビジュアル化を提唱している点が興味深いのですが、それは細かいお話。

・・・ここまでくると、人間として完成しているなあ、という印象です。


結局、「何が人間として正しいのか」をだれが、どう教えるか、ということが本質的な問題なのだと思います。おそらく親でしょう。いまの日本に素敵な生き方をする人間が減ってきたのであるとすれば、問題の本質は学校だけではなく、家庭の中にある気がしてなりません。



3年前、一度購入して、読まずに処分してしまった一冊。
ようやく読めるようになりましたね。




2009-05-23

『[実学・経営問答]人を生かす』(稲盛和夫/日本経済新聞社)




人を生かす。



そういう言葉が、割と好きです。

現代の名経営者、京セラ創業者の稲盛和夫氏の一冊。
彼は盛和塾、という経営者のための塾を主宰していて、その中の問答をまとめたもの。

これは中小企業経営者のための経営相談会のようなもの。中小企業の社長(大概が創業者の2世や3世)が「うちの会社は資本金○○、売り上げ○○で、従業員○○員。現状の課題は○○だと認識していて、○○という目標設定をして、○○という予定でいる。企業は市場の資本の最大化を図らなければ行けないと考えているが、何か意見あります?」みたいな、自信満々の社長たちに対して、バシバシと斬っていくのがこの本。

「あなたは頭はいいかもしれないが、現場の従業員を見ているのか?社長自らが現場に行って、何度も何度もうるさく指導しないと絶対にコストなんて削減できっこないんだ」みたいな厳しい発言が飛び出す中に、稲盛さんの経営者としての自分への厳しさと、他人へのやさしさを感じることができます。

教科書的ではないので、古典として残ることはなさそうですが、でもいい経営書のひとつ。






『平成維新〈PART2〉国家主権から生活者主権へ』(大前研一/講談社)



「国家主権から生活者主権へ」


初版は1992年6月当時は宮沢内閣で、その次が細川内閣。

・・・驚くほど最近の話題と一緒。


大前研一がすごいのか、日本の政治がダメなのか、どうなのか分かりませんが、
確実なのは、20年近く、いやきっとずっとその前から、政治改革の議論は一緒なんだなあ、ということ。これは農業も一緒です。

政治も、農業も、もう先送りにはできないでしょう。








『やりたいことは全部やれ!』(大前研一/講談社)



自分への責任、家族への責任、社会への責任、日本人であることの責任――



確かに、やりたいことを全部やってるなあ、と思うのが大前研一。
そういう生き方の秘訣・・・というよりも、彼の人生自慢の一冊。
引越しの際に移動した本が実家にあり、その中にまぎれていて、GWに息抜きに読んだ一冊。

最近、オオマエケンイチ化してきたなあ、と思うこのごろでした。




2009-04-29

『ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか』(P.F. Drucker著,上田惇生,田代正美,佐々木実智男/ダイヤモンド社)



「つまるところ、成果を生み出すために『既存』の知識をいかに有効に適用するを知るための知識こそが、『マネジメント』である」



ドラッカーの晩年の一冊。
基本的に彼は①論文を書く→②HBRに掲載→③コメントをもらってリバイス→④まとめて一冊に、という流れで本を作っているようです。なので、本に統一性がない部分がたまにありますが、良くも悪くもそんな印象。

「ポスト資本主義社会」を扱った一冊。テーマが壮大なのですが、それに埋もれることなく、鋭く描いています。資本主義社会の形成の歴史から、その本質まで、そしてその後の社会のあり方を時系列で並べ、現在社会の延長線を切り出すという内容。

これまでの社会には中世=騎士・武器、近代=資本家・生産手段、現代=市民・知識、という時代の流れがあること。そしてテイラーが「生産性」という概念を導入し、労働を分解し、評価し、組織することによって生産性向上がすべての分野で可能であると示したことによって、知識を統合・利用する知識社会が到来した、らしい。


要は専門知識が溢れる現代においては、「知る」ことよりも「使う」ことのほうが重要であるとの指摘。そのために企業をはじめとしたあらゆる組織には「マネジメント」が必要であり、知識利用の観点から教育機関も、個人も、再構成されるべきだ、みたいな主張。


留学して思ったのは、優秀な人間は世界中にたくさんいるんだろうけど、優秀な人間の能力を十分に発揮させられる人って、ほんとうに一握りしかいないんだろうなあ、ということ。なんだかんだいっても、「マネジメント」を学びたい、というのは一生のテーマのようです。









2009-04-18

『仕事が10倍速くなる最強の図解術』(開米瑞浩/東洋経済新報社)



図解は思考ツールである。



研修先の図書館にあった一冊。
活字中毒なので、思わず読んでしまいました。たまにはビジネス書もいいですね。

図解術の本。仕事が10倍速くなるかどうかはわかりませんが、わかりやすく丁寧です。

特徴的なのは、図解を核にロジカルシンキング・話し方を紹介していること。

図解は理解支援の手段なんですね。
文章を理解する、思いを伝える場合に、図解するとわかりやすい。
論理的に誤り、抜け、漏れ、飛びがないか、一瞬でわかるようになる。

ちなみに、一般的な「伝え方」の順序は下記だそうです。

statement:物事を単純化しよう
stickey notes:キーワードを抜き出そう
sequence:順番を整理しよう
summary:語りかける言葉で全体を表そう

これはわかりやすい。

図解が理解しやすいということは、人間の脳の認識構造も「図」なのかもしれませんね。






『食糧』(朝日新聞経済部/朝日新聞社)




「今日の文明国の流れは、経済がすべてに優先する政策をとっていることだ。だから経済には聖域はないだろう。しかし、人間には聖域はあるのだ」


1983年の同名新書の文庫版。私よりも古い本ですが、基本的な状態は変わっていない、らしい。

描き出しているのは、環境と経済の両立における行政の無策。
役所がアタマで描いた論理は、過去のサステイナブルな習慣を破壊し、現場の経済では通用しないばかりか、環境への深刻な影響を及ぼしている、と。遺伝子組み換え食品を含め、この時期にここまで農業の実態を抉り取っていることは驚きで、さすが朝日新聞と思ってしまいます。

が、裏を返せば、農業問題や農業の議論はこの25年間、さして変化していないということ。
つまり、問題が先送りされているということ。

何が問題なのか。本質はいたってシンプルな気がしています。







2009-04-05

『やっぱりお昼はおべんとう―まとめづくりとフリージングで』(婦人之友社編集部)



どうしたら料理って、うまくなるの?



最近、恐れ多くも、自ら料理会を開くことが何度かあるんです。
さすがに変なものは出せないので、真剣に料理のウデを上げたいと思ったりして、買った一冊。

91年に初版が出て、08年で36刷を数えるベストセラーの一冊。
料理本って、星の数ほど出ていますけど、こういう類の本は、ブックオフでは置いていないんです。みんな手元に置いておくんだもん。

本書の特徴は、収録しているレシピの多さと、カテゴリーの豊富さ。
素材別だけでなく、「色別」(!)というマニアックなカテゴリーがあり、すごく使えます。
思えばお弁当って、1,2箱で、味も、栄養価も、見た目も満足させなきゃいけないんですから、そこにこめられる技術って、きっとすごいんでしょう。

お弁当用の本ですが、別に普段の食事でも使える内容です。

たぶん一冊を全部作ってみると、ウデがあがるんだろうなあ。。。と思う最近です。





Let's eat vegitables!



週末は常備菜づくりです。


ついに社会人生活が始まったわけですが、3日して分かったのは料理する時間<睡眠時間、ということ。

というわけで、週末を利用して常備菜を作ったのでした、が。

・七福なます・・・これはおいしい。
・人参のマリネ・・・元気になる色。
・中華風甘酢漬け・・・イマイチか。
・野菜のマリネ・・・おいしい。
・ひじきと人参のマリネ・・・ヒットです。
・白菜のしょうが付け・・・微妙。
・大根のはりはり漬け・・・まあまあ。

一週間食べようと思うと、結局マリネ&つけもの系になってしまうのですね。
ミツカンの酢を使い切ってしまいました。

こうすると、緑の野菜が入りづらいということも視覚的に理解。
青菜をゆでて冷凍しておけばいいのか。。。


何だか、料理が趣味でよかったなあ、と思う最近です。







『農業の継承と参入―日本と欧米の経験から (全集 世界の食料 世界の農村』(酒井 惇一,伊藤 房雄,柳村 俊介, 斎藤和佐/農山漁村文化協会)




跡継ぎがいない?それなら、若者を送ればいいじゃない。


・・・という発想は机上の空論だなあ、と思わされた一冊。
シリーズ物の一冊。これは農業の新規参入や継承のいわゆる「後継者問題」を扱ったもの。
日本において、農家を「継ぐ」ことの歴史的な重みと、現状の不人気ぶり、そしてたとえ後継者がいたとしても、そこから健全な経営を行うことがいかに難しいかを描いています。

本書の独自性は、地理的比較の多面性。
日本は北海道とその他の地域、海外は西ドイツ、フランス、アメリカの同じ問題をどう解決しているのかを描いています。いかに相続の際に農地(やその他農業関連資産)の分散を防ぐかなど、それなりには参考になります。

海外と日本での大きな違いは、親子であっても、共同経営者として法的に独立した存在であるらしいこと。継承に関しても、金銭で土地や機械をやり取りする。翻って日本では、たとえ跡継ぎがいて、その人が農業を主体的に営んだとしても、口座は元の経営者が管理していたりして(この辺は農協の問題かもしれませんけど)、法的な継承がうやむやのままになってしまうらしい。

驚いたのは、アメリカでは農業=夫婦で営む一世代限りのもの、という認識らしいこと。
要は、息子や娘は基本的に継がない。つまり、農業を始める人は、親元か知り合いのところで研修→農地をレンタルして就農→たまったお金でどこかの(親の場合だってある)農地を買う・・・みたいなサイクルで回っているらしい。アメリカ人って、先天的に経済学がマインドセットされてるんですかね・・・。

そのほかドイツはマイスター制度があるとか。

一番の学びは、たとえうまく後継者が見つかり、「継いで」もらったとしても、その後の経営を軌道に乗せることは必ずしもうまくいかないということ。特に大規模経営は、生産技術・販売技術にそれなりのノウハウがいるわけなのですが、農業はサイクルが季節に依存するので、学びづらいんでしょうね。ベンチャーだと最初に重要なのはまず営業力であって、商品開発力はその後ずーーーっと先だったりしますが、農業の場合は最初から求められるんだなあ、と改めて農業の難しさを感じたのでした。















2009-03-30

『概説現代の日本農業』(藤谷築次,荏開津典生 編/家の光協会)



「批判するにせよ、支持するにせよ、まず必要とされるのは正しい実態認識である」



東京で開催された第21回国際農業経済学会のために英語・日本語で同時出版された一冊。
そうそうたる面々の論文集ですが、偏りがない主張で、網羅的で、科学的に検証しうる範囲での最大限の概論を貫いていて読みやすい、という印象。戦後の農業の歩み、食糧消費の変化、農協の役割、ムラや地域社会などなど、「日本のここを理解してほしい」という海外の農業経済学者への意見が垣間見えるようで、とても勉強になりました。

印象的だったのは「工業立国である日本にとって、比較劣位になる農業はどう頑張っても衰退せざるを得ない」との主張。確かに。

一方、「なぜ日本に農業が必要なのか」については、驚くほど主張が平坦です。科学的でない印象。

きっと、学問や科学的に割り切れないところに、根底の意識があるんでしょうね。

でもそこを論理にしていくのがこれからの仕事。




2009-03-26

『私の仕事』(緒方貞子/草思社)



「コンセンサスという概念も、日本独特の捉え方をしています。コンセンサスというのは、自然に形成されるものではなく、強力なリーダーシップが引っ張って初めて、形になるものなのです」



緒方貞子氏の著作集。日記やエッセイ、スピーチなどを厳選して詰め込んだ一冊です。

冒頭は「Ⅴ 世界に出て行く若者たちへ」と題した章の抜粋。

・成長の鍵は好奇心
・現場の裁量を増やすことが、国際機関の仕事
・日本に留まっていたら、世界中で起きている事件は常に「他人事」でしかない。
・日本人はリーダーシップが欠如している
・「国際」基準と「国内」基準の別なんて、あるほうがおかしい
・言語は大事

「開発し、発展『しなければいけない』」という視点が嫌で、ものすごいドメスティックな仕事につくことになった私ですが、「他人事」になるのは恥ずかしい、ぐらいの気持ちは持っているつもりです。いや、持ち続けないと。





『なぜ日本は行き詰ったか』(森嶋通夫著, 村田安雄・森嶋瑤子訳/岩波書店)



「生活水準は相当に高いが、活動力がなく、国際的に重要でない国。これが私の21世紀半ばにおける日本のイメージである」



・・・という言葉で終わる一冊。
初版は04年ですが、今日では「行き詰った」というよりも、「行き詰っている」というほうが正しいかもしれません。

著者の森嶋通夫は、LSEの教授で、数理経済学者。
マルクス経済学を数理モデルに「翻訳」したことで知られる世界で活躍した数少ないエコノミストの一人。
もう亡くなっていますが、一時はノーベル経済学賞候補に名前が挙がったこともある方です。

日本語の新書ではこの本が最後のようで、経済学・社会学・心理学などなど、様々な領域を統合して日本経済の現状を分析しよう、というのがこの本の試み。すげえ。

内容は、「明治維新・第二次世界大戦によって歪められた日本人の思想は、(一部)国民の中に危機意識をもたらし、それが稀有な経済発展を達成した。しかし、歪められた思想は教育制度と保守的な経済体制・政治体制に反映され、そこに順応した結果、日本人は何もできない国民になってしまった。今後、日本が過去に達成された以上に繁栄するとは到底思えない。ただ、中国やアジアの他国と協力して経済圏を構築していくなら何とかなるかもね」という感じ。




思えば、04年は小泉内閣真っ盛りなのです。
今読めば普通ですが、当時これを書いたと考えると、すごい・・・というのは私の不勉強でしょうか?

本当の危機って、じわじわくるもんですよね。









『牛丼を変えたコメ―北海道「きらら397」の挑戦 』(足立紀尚/新潮社)



競争と革新。



まさにプロジェクトX(古い?)の一冊。
今はもう有名になったきらら397の開発史を辿ったノンフィクションです。

明治期より、稲作には向かないといわれ続けてきた北海道。
もともと亜熱帯産のコメを、品種改良を重ね、冷帯での生産を可能にした、そんな偉人たちの汗と涙がつまったお話。

しかし、物語はそれで終わりません。
時代は下り、生産調整開始へ。いわゆる「減反」です。いくら美味しいコメを作っても、需要がなければ売れない。。。そこで、ホクレンが考えたのが牛丼用にきららを売り出すという戦略だった(らしい)のです。

競争もなく、のほほんと過ごしてきた、といわれる戦後稲作ですが、産地&品種というまとまりで見れば、それはそれは熾烈な争いが繰り広げられてきたのだということがわかります。競争に勝って得たものは、いったいなんだったのでしょうか?








『市場の変相』(モハメド・エラリアン著、牧野洋訳/プレジデント社)




マクロを見るためにミクロ。


金融系の本第二弾。

動機は前回と一緒で、紹介されて読んだのでした。
FT(Financial Times)の"the book of the year in 2008"という有名な一冊。
著者のモハメド・エラリアンは世界最大の債券ファンドのCEO&CIO。
ハーバード基金のCEO、HBSの教員、IMF職員と「夢のような」経歴の持ち主。


――「『大転換』をどう理解し、対処するか」という問題意識で書かれた本。
投資家、政府、国際機関と多様なアクター向けに、ミクロ(個人の考え方)とマクロ(集団の現象の理解)を解説しているため、多少表現がぼやけていますが、
きっとすごく勉強して直接話を聞いたらいいんだろうなあ、という印象。

・未来を予測したいのなら、普段から数字で予測してギャップを明確にせよ
・世界経済の変化の力点は、先進国から新興国にシフトしている
・行動ファイナンス、金融、が発展分野?
・オーバーレイ戦略とテール保険が短期的に有効

世界のマクロ経済って、新しいフォーマットがあって、それを理解すれば常に理解できるものなのかと思っていたのですが、どうやらそうではなさそう。
主要なアクターを見定めて、その行動原理とアクター間の行動の交錯の中に未来があり、意外?とミクロ的なもんなんだなあ、と認識を新たにしました。

なるほど。やはりミクロだな。

2009-03-17

『資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす』(竹森俊平/日本経済新聞出版社)



バブルという必然と偶然。



現代の金融の世界を垣間見てみたい、という思いで手に取った一冊。

経済学部で勉強したはずなのですが、金融はわからないなあ、という危機感がようやく芽生えた最近。
金融市場も、穀物の先物相場やバイオエタノール用の穀物価格で日本の農業とリンクしているはずなのです。
でも、わからないし、考慮する枠組みがない。

専門(といえるかは大いに疑問ですが)のミクロ経済学は、限定された状況での個人や企業一つ一つの行動分析を行う学問。あくまで「限定された」状況の中なので、与件が変われば、行動も変わってしまうのです。与件の大きな変化・・・それが最近の巨大な財政政策でしょう。
しかも、こうした政府の介入は、今までの「市場に任せればうまくいく」的な経済学の思想と矛盾しています。いったい何が起きているのか?


内容は「金融危機の原因を学問と現実で読み解く」という感じ。
著者は慶大経済の教授。一般向けの本。海外の論文やシンポジウムの内容紹介が中心なので、専門家には物足りない一冊でしょうが、知識のない身としてはわかりやすく、非常に興味深い一冊でした。

前半は、学問的な危機の発生メカニズムの解明。
後半は、サブプライム危機の発生の概説。


①管理通貨制度導入以降の経済では、「信用」によって「紙が金に化ける」ため、どうしてもカネ余りの状況にならざるを得ず、あまったカネを投資する主体が発生するため、実需と乖離した価格形成(=バブル)が必然的に発生する。

②バブルやその崩壊という「不確実性(発生が確立では予測できないもの)」においては、一度発生した動きが増幅する危険性を秘めている。これに経済のグローバル化が加わると、ショックは全世界に広がりうる。

③加えて、金融市場の制度設計上に経済の動向を過度に反映させる仕組み(時価会計など)が採用されたこと、不確実性をリスクとして統計処理した制度上の欠陥が組み合わさり、今回の危機が起こった。

④今後、金融制度の見直しが起きることは確実だが、時価会計の見直しの議論を見てもわかるように、価格シグナルの扱い方をめぐっては、たえず循環が繰り返されるだろう。

てな感じ。


「経済も経済論争も経済学も、循環する」という発想が、すごく新鮮。
確かに、農業もそうです。

経済学って、積み重なる学問じゃなくて、きっと回る学問なんですね。







2009-03-14

『好かれて尊敬されるあの人の聞き方・話し方』(内田賢司/明日香出版社)



「正面の理、側面の情、背後の恐怖」



「初めて読む、話し方の本」という印象。
内容は基本的かつ初歩的。いろんな本に載っている知識をがっと集めた感じ。

・交渉に強い人は日ごろから鍛えている

・・・要するに日々の人間関係は「コミュニケーション」の実践の練習場なのです。そこに人がいればその場はゲームなのです。日々の会話の中で、自分の向上を目指し、交渉に挑戦する姿勢、それが大事、らしい。いや、コミュニケーションに限らず、大事です。


それを再認識しただけでも、400円の価値はあった、かな。

知識じゃなくて、大事なのは体験なのですね。本を書くにも。


『ウケる技術』(水野敬也,小林昌平,山本周嗣/オーエス出版社)



コミュニケーションはサービスである。



・・・すごく、よく作られた一冊。
タイトルは一発芸のためのネタ集みたいなイメージですが、内容は高度。
というか、本当にビジネス書漬けされている人が書いてる。。。

本質的な内容は「コミュニケーションの教科書」。コミュニケーションの中で主要な6つのパターンを抽出し、ケースとして紹介しながら、それに付随する形で必要な38の技術を解説しています。「意識的に覚え、無意識的に使う」ことを目的とし、最後には38のスキルを4つにカテゴライズし、チェックリストまで作ってしまう丁寧さ・・・やりすぎです。著者は大手広告代理店&外資系トレーダー&ストリッパーという(たぶん)無名の3人。この組み合わせとこの内容は、すごい均衡ですね。

・・・と暗黙知を(うやうやしく)形式知にする過程にしきりに感動しきりだったのですが、見る人が見れば、当たり前の話ばかりなんでしょうね。こういう本は、著者と読者の経験の差が価値になるもの。著者はきっとすごい経験をしてきた人なのでしょう。といいつつ、「攻めすぎじゃね?」と思うのは、私の経験不足が原因なのかも???





『道は開ける』(D・カーネギー著, 香山晶 訳/HD双書)



how to stop worrying and start living



原題を直訳すれば、「悩むことをやめて、いきいきとした生活を始める方法」でしょうか。

『人を動かす』と共に、有名なD・カーネギーの著作。
この二冊しか書いてないのかと思いきや、彼はほかにもたくさんの本を書いてたんですね。
が、この二冊が残った、というのが訳者の巻頭言。詰められた情熱が、違うのです。


大学卒ながら、ゴキブリがうごめく極貧生活の中で暮らしていた若き日のD・カーネギー。
ある日、思い立って、仕事をやめ、自分のやりたい仕事として散々断られた挙句、ようやく探し当てたのが、YMCAの夜間学校の「話し方教室」。純粋に「無駄なく、スキルを積みたい」という学生のみが参加する教室。意味のない、つまらない話なら学生はすぐに出て行ってしまう・・・。そんな講座のために、彼が自ら作ったテキストがこの本。

書かれていることは「一日一日を生きよ」(過去や未来の心配をしても、生きているのは居間でしかない)、「悩みの原因を突き止めろ」など、基本的な内容なのですが、思えばこれがそんな「基本」を形作ったのでしょうね。そう考えるとこの類のマーケットの今日の発展ぶりには目を見張るものがありますね。


「現在に、自分に、与えられたものに満足しよう」


そんな思想が見て取れます。

基本的に、悩むのは「今」を見れていないから。自分がわかっていないから、なのです。



「自己啓発本は、ある時期に卒業、という類のものではなく、定期的に読んで自分の変化を確かめるものなんだ」

ということで、自己啓発本も、いろいろ読んでみようという最近です。
といいつつ、読むのはやっぱり古典ですけど。









2009-03-10

『「知の衰退」からいかに脱出するか? 』(大前研一/光文社)



「あなたは地球を商売の道具にする一方で、この地球に何を返していますか?」



日本人よ。お前らはバカだ。いや、個人としてはそれなりに賢いかもしれないが、この国自体がバカなのだ。政治家も、官僚も、マスメディアも腐ってる。というか時代遅れなんだ。俺は昔からこの状況に警鐘を鳴らして一時は政治家になってやろうと思ったが、お前らはバカだから俺のプランを理解できず、いまだにバカな政治家の下に、あくせく働かされている。アジアのほかの国では俺の考えが受け入れられ、発展しまくってるっていうのにな!ジャンプが悪いんだ。別にゲームが悪いんじゃない。日本は間違いなく没落する。この腐った国から、IT・英語・ファイナンスを身に着けて、一人ひとりが抜け出してほしい。必要なのは古典なんかじゃないんだぜ。俺はそのために大学を作ったんだよ。


という感じ。
基本的に「日本国民啓発書」ですが、なぜか「大前研一の半生」にもなっているという不思議な構成。
要するに、それだけ熱意を持って書かれているということでしょう。

大前研一って、もともとは原子力工学の科学者だったのです。早大理工→東工大→MITと進んで、政府のお抱え研究者になりかけてそんな自分の将来にうんざりして、マッキンゼーに渡った、というところまでは知っていましたが、その後はしらなんだ。偉い人ですよね。これだけ世界中で仕事しながら「日本のために」働いてるんですから。

政治家や官僚の無能振りを見るに見かねて政治家になろうと志したが、問題の本質は国民がバカだった、というお話。
だから本を書いて、学校を作って、「分かる人だけでもいい」と活動している、らしい。

「いろいろわけの分からんことを語る、頭のよさげで無内容な人」というものすごく穿った見方をしていたのですが、一冊も著作を読まずにそんなイメージを持つ自分こそ「バカ」ですね。

こういう人だったんだなあ、と彼の半生が透けて見え、多少感慨を覚えました。
本心は分かりませんが、非常に分かりやすい生き方。考えるだけでなくて、実行し、失敗し、成功し、次にどんどん進んでいる。考えることとやることには無限の隔たりがありますから、これは本当にすごいもんです、ね。

フローは無課税にして、ストックに課税する、とか経済学部的には萌えるのですが、そんなアイデアは昔から提案していたんですね。すごいもんです。

・経営もwikiになる
・アウフヘーベンできる仕組みがリアルにはなく、ウェブにはある
・④できる人間を連れてくる、のがリーダー
・どんな国からも学ぶべきである
・21世紀の教養とは、実践型の知識であり古典ではない
・サイバースペースの理解が必須

いろいろ「へー」と思いました。


ただ、大前研一だから、これでいいのです、よ。

政策の成果は歴史が評価するしかない。

どんなエレガントなモデルで、ずば抜けた政策を作っても、理解されなければ実行されない。実行されなければ意味がないのです。理論だけでなく、理解してもらうことも、実行をきちんと促すことも、結果を監視することも、それを評価して・・・といろいろやることがあるんだなあ、と考えると多少欝ですな。ビジネス的な政策って打てないんでしょうか。


「そうだ、僕はユニークな生き方をしよう」が本書の副題ですが、本書に紹介されていることの実践は決してユニークじゃないんですよ、というのが著者の主張なのになあ、とか思ったりしました。繰り返すようですが、主張には基本的に賛成で、言うことがないのです。オオマエケンイチモードになってしまってはいけないのですが、理解できないのか、と馬鹿にされるのは悔しいのです。その辺、いやらしい書き方かもしれませんね。


amazonによれば、初版は私の誕生日という運命的な一冊。
たしかに、それぐらいのインパクトはあったかも。






『マネー力』(大前研一/PHPビジネス新書)



ファイナンス、マジでやらないと、やばいかもしれない。



お前ら、国債残高がGDPの2倍近くある国の通貨なんて持ってていいのか?円はお金じゃなく、単なる地域通貨なんだよ。常識的に考えて規律のあるユーロのほうが信頼できるに決まっているだろ?高度経済成長期とその後のバブルに侵されて、日本はすべてが腐ってるんだ。大学の教育なんて無意味。これからはITと英語とファイナンスを勉強しないと、気づいたら負け組みだぞ。

・・・てな結論。後半は自分のBBT大学の講座紹介なのでちょっとがっかりですが、「本当にそうですよね」という感じ。基本的に、賛成です。

ユーロのみが規律ある国際通貨であり、今後はその価値を増すはず、というのはそれだけで考えれば確かにそのとおり(財政赤字がGDP3%以下、債務残高GDP60%以下でないとユーロを導入できず、もし離脱すると通貨の信用が極度に落ちる可能性があるので、結果的にどの国も財政規律を守り、通貨価値が安定しうるということ)ですが、柔軟な財政政策が行えないというデメリットもあるわけですから、一概にはいえないはずです。まあ、財政政策の有効性を疑うなら確かにポートフォリオ理論的に、合理的ですけど。

と細かいことはいいとして、「国民よ、賢くなれ」というのが本書のメッセージ。
提案はミクロであればミクロなほど意味を持つと思っているので、これはいいですね。
勝間和代は大前研一である、と書いてあった記事をどこかで見ましたが、これを読む限り、本当にそうでしょうね。


思ったのは、「ああ、見ている層が違うんだろうなあ」ということ。
いわゆる「ファイナンス」の視点なんでしょうか。自分の頭に、こういう考えができるソフトウェアが入ってないのです。見えないものに毎日翻弄されているようで、最近、とても気持ち悪いのです。経済理論に基づく政策提案はそれなりに理解できるのですが、はっきりいって、それ以外は理解できないんです。。。すみません、ミクロ経済学だけやればとりあえず経済学部と言えると思った自分が愚かでした・・・。ということで、将来の勉強の仕方を変えますね。


驚かされるのは、彼が世界各国の現状を生で見て、体験として語っていること。
理論がわかり、現実が見え、そこから自分で考えられる、というのは基本的ですが、王道ですね。

そういう風に、考えられるようにならないとね。











『農業政策』(豊田隆/日本経済評論社)



経済学的に農業政策を記述する。



そんな印象の本。さっと読み終わるはずが、ずるずるとかかってしまいました。

グローバル化の中で、農業の非市場的な価値も考慮しながら、世界や日本の状況を整理した本。多国籍企業アグリビジネスから、EU・アメリカ・日本の農業政策の対比、日本の農業改革、世界の環境政策・・・などなど、扱うトピックが多く、とにかく情報量が多い。

ああ、こんな感じだなあ、というのが読後感。
「東アジアと共生する農業・環境・食料政策」という結論を持ってきているあたりが新しいか。ただし現場に即した根拠があるわけじゃありません。

純経済学的に考えると、確かにこういう結論になるんです。が。

情報量の割に、何か空虚な印象がぬぐえないのはどうしてなのでしょうか?
経済学で計れないものを無理やり経済学で考えているような気がしてしまう。。。
といいつつ、そうしてくれないと読めないのは不幸なものです。

必要なのは、政策でも政府でもなく、農業者でも消費者でもなく、企業なのかもしれません。ビジネス。





以下、メモ

・ドーハ・ラウンドの日本政府モダリティ案は極めて合理的
①農業の多面的機能
②食料安全保障
③農産物の輸出入ルールの不均衡是正
④開発途上国への配慮
⑤消費者・市民社会への配慮

・アメリカでは、米の生産費の71%が財政補填
・地域開発政策の基本理念はステープル政策
輸出向け一次産品を交換しながら経済発展を目指す
・麦作面積は50年の178万haから17.5万ha(73年)に減少
・米国サンキストは家族型農業者が所有する農協


2009-03-02

『ツァラトゥストラはこう言った 上/下』 (Friedrich Nietzsche (著), 氷上英広 (訳)/岩波文庫)



「あなたがた創造者たちよ!この『・・・のために』を忘れることだ。こうした『・・・のために』『・・・の目的で』『・・・の理由で』などでは決して行わないということを、まさしくあなたがたの創造の徳は要求しているのだ。こうしたいつわりの小さな言葉に対して、あなたがたの耳をふさぐべきだ」



「教養豊かな知識人」に憧れて、手に取った一冊。
話の折にニーチェが出てくるとわからなくなるし、はるか昔に友人から紹介されてもいたので。

よく分からないなあ、というのが感想。
が、すごいことだけは分かる。考えすぎ、詰めすぎ、構成しすぎ、分かりにくく書きすぎ。でも、すごい。


きちんと理解できない。たぶん1%も読めてないんだろうなあ、と。ドイツ語も分からないし、ゆえにルター版の聖書も読めないし、ショーペンハウアーも知らないし。教養を深めるということは、本当に暇な人か、頭がよくて余裕がある人にしかできないことなんですね。

超人、永劫回帰・・・もっと自然に、楽しく、何度生きても良いように生きる、みたいな概念はそれとなくわかるのですが、そんなのは解説書を読めばいい話。
ニーチェ本人がよく分からんのです。

何のためにこれを書くのか。彼は誰に何をしてほしいのか、何がしたいのか。
これを書くことで、あれだけストイックに思考する彼の何が満たされたのか。
どれだけの勉強量と、思考の鍛錬をしているのか。
そんなに、やすやすと書けるもんじゃないんですから。ありえない切れ味ですよ。


きっと哲学をやるよりも、子育てするほうが、人間についてよく分かるんでしょう、ね。
昨日たくさんのちびっこと触れ合って、すごく思いましたとさ。




『恋愛投資概論』(Ferdinand Yamaguchi/ソフトバンククリエイティブ)




「恋愛は投資である」



本当に、そういう本。じゃあ、リスクとは何で、リターンとは何で、レバレッジとは、デイトレードとは・・・と想像が膨らみますが、本当にそういう書き口。

人間生活をビジネススキームの中で記述する、というのは、よくある話。
まあ、わかりやすくて面白いんですけど、本当にそれだけなんですよね。。。

農業関係には、こういうのが一冊あってもいいのになあ、と読んでみたのですが・・・なんだか読む前の印象以上の何かは得られませんね。

著者は男性ですが、きっと女性のほうがこんな視点なんじゃないのかなあ、と思ったり。

銘柄ごとのイラストの「それっぽさ」はすごい。





『お米は生きている―自然と人間』(富山和子/講談社)



「わたしたち日本人は、お米と大のなかよしです」



子供向けの、日本のお米についての本。
第42回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校高学年の部)。

「日本人とコメ」というテーマで、先史からのコメ作りと社会に与えた影響の紹介から、多面的機能、現代の農業・環境問題まで、幅広く扱っています。

「難しいことをわかりやすく」書いてある・・・と期待して読んだのですが、わかりやすいものの、難しいことが書いてあるかはちょっと疑問です。教育にとって重要なのは、日本の農業が大事であることを刷り込ませることではなく、自然に感じられるようにすることなのではないでしょうか、などと思ったり。

95年に初版。ガット・ウルグアイラウンド合意と同年ですから、そういう意図があったのでしょう。
なんだか、ね。



2009-02-26

『 イチロー 262のメッセージ』 ( 『夢をつかむイチロー262のメッセージ』編集委員会/ぴあ)



「『ただの野球だろ?』という気持ちは、昔は、ありました。今は、ないですよ」



尊敬するとある先輩に紹介された一冊。
かなり前に買って積読状態だったのですが、めくってみたら、今の自分に必要だったようで。

似てるなあ、と思っていたのですが、やっぱりそのようです。特に最近の性格が。


本書は「声に出して読みたいイチローのストイックな言葉集」という感じ。
世界最高峰で、さらに高みを目指して日々努力・進化し続けるイチローの秘密に迫るべく、彼の哲学を端的に表していそうな言葉を記者が選んでまとめたもの。やりすぎです。



問題はスポーツに勝ち負けがあり、政策立案にはないこと。
というか、「勝ち負け」ではないのです。。。


難しいなあ。


2009-02-25

『人生の短さについて 他二篇』(Lucius Annaeus Seneca (著), 茂手木元蔵 (訳)/岩波文庫)




「それゆえ、われわれが知ろうとするのは、一体何を行うのが最善であるか、ということであって、何が最も多く世の中で行われているか、ということではない」



「人生の短さについて」
「心の平安について」
「幸福な人生について」

読書は量ではなく質だなあ、と今更思って、本を買うのは控えようと思っていたのですが、
この表題を見て、いろいろ悩んだ挙句、やっぱり買ってしまいました。
別に読む必要はなかったけど、読んでよかったなあ、という一冊。


セネカ(ルキウス・アンナエウス)は前5/4年-後65年のストア主義者であり、政治家。
ネロ帝の家庭教師であったことでも有名な人。

著作の多い人で、この本はその中の冒頭の三篇を収めた本。
友人に当てた手紙から構成されていて、基本的に(自戒を含めて)雑多な日常を、いかに生きるか、という主張。
基本は「自分自身を強く持てば、回りのことなんかどうでもよくなるんだよ。だから自分を鍛えなさい」という感じ。
いかにも哲学者ですが・・・最近はこういう感じです。

そういえばストア派とかエピクロス派とか、覚えたなあ、と妙な懐かしさを覚えましたが、まさにその時代。

彼は、結構野心的な人だったんですね。政治家に睨まれ処刑されそうになったり、ネロ帝に加担して彼の母親を暗殺させたり
・・・結局彼は最期は処刑されます。

ストア派の素養がありながら、政治という私利私欲が渦巻く世界に身をおいた人間。
そんな彼の(理想の)生き方。


なんか、中庸や論語とあまり変わらないですね。

2009-02-23

きんぴらごぼうとひじきの煮物と大豆。



お弁当用。



3日間旅行で家を空けていたので、食材を使い切るために前日にお弁当のおかずをまとめて作ったのがこれ。
いやー、しばらくぶりに思いっきり作りましたよ。すっきりー。
小分けにして、ラップに包んで冷凍しておくのが、innovationなのです。
だって、これがあれば毎朝のお弁当作成時間が10秒ぐらい(ご飯除く)なのですから。

大豆は、便利なのでお弁当に入れませんがまとめてゆでて、小分けにして冷凍。
結構、使うんですよ。

午前中に、がしがし作っていたのですが、午後は妹が残りの食材をせっせと調理してました。
兄妹って、変なところが似るんですね。。。




2009-02-19

『星の王子さま』(サン=テグジュペリ(著),内藤濯(訳)/岩波少年文庫)



「さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」



先日、家族で京都旅行に行ってきました。

「これは弘法大師が開いたお寺です。この塔は・・・五代目で家光時代に再建されたものですね」

「これは鎌倉時代に建立されたものです。これは四代目で・・・」

「これは平安時代の建立。一度火事にあって記録によればこれは六代目の・・・」


そんなのばっかり。
そりゃ数百年に一度ぐらいは火事やら地震が起こるでしょうから。


「なーんだ。新しいものなのか、がっかり」と思っていた最初。

思えば、こんなにコストがかかる建物を、何度も建て直させた「何か」ってすごい、ですよね。



大切なものは、やっぱり目に見えないんでしょう、ね。



2009-02-17

『人を動かす』(Dale Carnegie(著), 山口博(訳)/HD双書)



使う<動かす<<生かす



この分野では昔から有名らしい一冊。
昨今は勝間さんが紹介したりして、また売れているらしい。

3年ぐらい前、購入したのですが、処分してしまっていて、買い直してしまいました。
この本は、本当にいい本だなあ、と改めて思います。

そもそも初めてこの本を手に取ったのは、とあるきっかけで。
人を「使う」と言っていたら、「何を偉そうな。人を『使う』なんて言うもんじゃない。人は『動かす』もんなんだよ」と怒られたことがあり、それで購入したのでした。


と思っていたら、昨日、とある先輩に「人は『動かす』というか、『生かす』もんだよ」と言われました。そういう言葉が自然に出てくる人間になりたいですね。



『生きて死ぬ智慧』(柳澤桂子/小学館)



西洋=二元論、東洋=一元論、らしい。



般若心経の現代語訳です。

著者の柳澤桂子は、お茶ノ水女子大、コロンビア大卒の生命科学者。
慶応大、三菱化成生命科学研に所属し、「これから」というときに不治の病に冒され、研究人生を断念せざるを得なくなり、その後歌人や創作活動を始めた、そんな人。

40万部近く売れた本書は、そんな彼女の息吹みたいなものが伝わってくる一冊、なのでしょうが、僕が印象に残ったのは、冒頭の説明。


西洋的な人生論や生き方指南書は自分と世界を二元的に捉えていますが、現実には自分は世界に埋没していて、周りとの関係性の中で生きていかざるを得ない存在。東洋的な思想はすべてを一元的に考え、宇宙の根本原理から自分自身の生き方を同じ原理で語るので現実社会に近く、ゆえにわれわれにとっては役に立つ、のだそう。

これはビジネス書の世界でもまったくそうで、いわゆる外資系のハウツー本なんかは、二元的なんです。目的を定め、目標を設定し、優先順位をつけて、それに向かってコスト最小で向かう。他者との関係性からは独立で、単線的に物事を考える感じ。でも、僕らはキカイじゃないんだから、現実はそんなに簡単にいかない。だって、自分が動くと世界は微妙に「ずれて」いくんですから。

なんとなく思っていたことをズバリと当ててくれた一冊。
生き方もそうですけど、この人は立派ですねぇ。


『EQ―こころの知能指数』(Daniel Goleman(著), 土屋京子(訳)/講談社)




EQ=こころの知能指数。



IQとの対比で、情報処理のような機械的な能力ではなく、自分の感情を制御し、社会の中で効果的に順応して幸せに生きる力がEQ、みたいな感じ。人間には理性と感情の2つの自分がいて、感情はしばしば人生を踏み誤らせることがあるので、それを賢く制御していきましょう、みたいな。

『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』には賢明にも「読むべき本」リストが付いているのですが、そこで見つけて読んだ一冊。だって、どこのブックオフでも大抵この本は100円で売ってるんですから。

本書はEQの解説書、という位置づけで内容はややアカデミックです。
というのも、Why(なぜか?大脳辺縁系の働きとか)やWhat(実際にどうEQを使って人間行動が分析できるのか)を中心に記述してあり、how(じゃあ、どうすればEQを高められるのか)があまり書いてないからです。書いていたとしても、何か物足りない感じ。さらに、この手の翻訳本にありがちの、演繹的な構成。いや、具体例が多くて結論が少ないんです。

とはいいつつ、自分自身の心の微妙な変化を、アカデミックな見地から分析して、科学的に理解するには極めて役に立つ本のような気がします。教育に対する考え方とか、自分の思っていた直感的なものにすごく近くて、共感できました。おかげで読み飛ばしましたけど。。。

人間って、不思議ですね。




『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』(ロバート キヨサキ (著),白根美保子 (訳)/筑摩書房)



「知ってるか?世の中には2種類の人間しかいないんだ。1つは他人のために働く奴、もう1つは自分のために働く奴さ。さて、君はどっちになりたいんだ?」



そりゃ、「自分のために働く」ほうがいいですよねー。というだけの一冊。

具体的にお金を儲ける方法は一切書いていません。
何も書いてないけど、何でも書いてあるような感じの一冊。

もはや形式的には将来の職業を決めてしまったわけですが、もうちょっと早くに読んでおいたら人生変わっただろうなあ、と思ってしまいました。

著者には2人の父親がいたらしい。ひとりは実の父。もうひとりは友人の父。実の父は公務員で、高学歴。友人の父はたいした学歴はないが、自分でビジネスをしている人間。実の父は年齢が上がれば上がるほど、自由になる時間は減り、給料は増え、かつ借金も増えていった。一方、友人の父は年齢が上がればあがるほど、自由な時間が増え、財産も増えていった。実の父は真面目で頭も良い。それがなぜこのような違いを生むのか・・・というのが本書のきっかけ。ベストセラーになった前作の追加版がこれです。


「勉強して、いい学校、いい会社に入り、いい家庭を築く。それが幸せ」という価値観は、産業化時代、工業化時代に形成されたもの。そこでは工業社会に順応する訓練された人間を社会的に「生産」する必要があり、そうして「生産」された人間は一定の社会的成功が約束されていた。しかし、今は情報化社会であり、そこでは訓練は何の役にも立たない。発想のパラダイムを変え、必要な学習を行い、「賢く、自らのために働く」べきである。


みたいなのが結論のようです。うーん。思いっきり嵌ってました、よ。
基本的に自分の人生には常に満足している幸せな私ですが、さすがにもう一度学生時代を送りたい、とか思ってしまいました。それぐらいの一冊。




『ノルウェイの森(上下)』(村上春樹/講談社)



「日本人の小説、読んだことあるよ。誰だっけかな・・・題名はたしかNorwegian Woodで」


 「ああ、ハルキ・ムラカミでしょ?彼は現代の日本の作家で一番有名な人間だよ」―やれやれ。また村上春樹か。スウェーデンで彼の名を聞くのは2度目だった。最初はルームメイトのポーランド人がつれてきた2人の女友達のうちの1人から、そして今、日本への帰りに一緒にスカンジナビア半島を北上した中国人の友人。2人によれば、彼はかなり有名らしかった。「あの小説は中国人の若者に大きな影響を与えたんだよ。僕もかなり衝撃を受けた気がする、内容に関してはあまり覚えてないけど。君は読んだことはないのかい?」。ストックホルムからキールナという街に向かう途中の、夜行バスの中で、彼は聞くのだった。僕らは観光バスの2階の一番先頭に座っていて、前は真っ暗闇だった。横には白樺らしき木が枝を雪で白く染めながら、さびしそうに延々と続いていた。森の中に、一本だけ道があり、ほかは何もなかった。「いや、名前は知っているけど、読んだことはないんだ」僕は、基本的に日本人作家の小説は読まない人間なのだ。それは第一に、目的意識がないと何も出来ない性格の人間だからで、第二に小説は飛ばし読みができないからだった。小説は別に嫌いではなかったが、読む動機がなかった。


・・・ということで、ようやく読んだ一冊。すみません。非国民で。
昔読んだ小説と、構成が似ているのは、この作品をまねたんでしょうね。

「すごいところで書いてるなあ」というのが読後感。生と死、理性と本能、男と女、日常と非日常、永遠と無常・・・主人公は、すごく中性なんですね。いろんなディメンションがあって、すべての軸の均衡点で小説を書いているから、こうなるんでしょうね。

「なんでこれが書けるんだろうなあ」というのがもうひとつの感想。登場人物が、多いんです、よ。

一日で読了した一冊。
最近本ばかり読んでいて、思考方法が永沢さんみたいになりそうなんで、気をつけます。




『必ず覚えられるTOEFLテスト英単語3400 CD付』(河野太一/アルク)



思い出の一冊。



官庁訪問後、真っ先にやったことが、TOEFL受験でした。
大学院を受ける気満々だったんですね。苦笑

で、当時読んでいた一冊。
英語はなんだかんだ言っても、語彙数が増えないとどうしようもないらしく、単語を覚えるには1つの単語帳を何度も繰り返すのが(自分にとっては)効率的なのです。で、amazonで評判を見て購入。満足のクオリティ。

本書の特徴は「覚えやすくなるこじつけ」がついていること。declear=で、くれや、と宣言する、みたいな。無機質に単語を覚えていくのって、つるっとした真っ白な壁を上れといわれているみたいですごく苦痛なのですが、この本は表面にいろいろキズをつけてくれている感じ。読みやすいんです、ね。こじつけのセンスの評価は人それぞれでしょうが、自分のセンスのレベルが、著者と同じぐらいなのでまったく気にならなかったり。笑

3400覚えよう・・・次回までに。









『TOEFL TEST対策iBTライティング』(安藤新/テイエス企画)



ライティング対策本。



スピーキング対策本の姉妹本、のはずなんですが、クオリティは遠く及ばない一冊。
著者が違うからでしょうかね。解説が変なところに丁寧(問題以前の解説が多く、しかも抽象的)で、肝心なところの解説が薄い感じ。

amazonでいろいろ調べて買ったのですが、ライティングは定評のある一冊があまりないようだったので、「えい」と思って買ってしまった・・・うーむ。

と、ボロクソに言ってますが、本当にボロクソだったのは自分のwritingの出来のほうで・・・。
贅沢言わず、謙虚にがんばります。Just Do it!




2009-02-13

『TOEFL TEST対策iBTスピーキング』(川端淳司/テイエス企画)



I am studying now...



明日、TOEFLなんです。ということで、まさにいま、熟読中の一冊。
amazonの評価を見て購入したのですが、いい本ですね。

「英語は暗唱して覚えなさい」という著者の哲学に共感できる人にはよいと思います。
いままではアルクを購入していたのですが、断然こっちのほうが情報量が多く、構成も無駄なく合理的。
TOEFLspeaking自体、勉強しやすいものなのかも、と幻想を抱かせてくれたりします。

受動的なreading,listeningと比べると、speakingは俄然楽しいよなあ、と思ったり。
まあ、できるかどうかは別としても。

もうちょっと早くにこの本に出会っていれば・・・とは言わず、がんばります。





2009-02-12

『中庸』(宇野哲人/講談社学術文庫)



「子曰、舜其の大知也與。舜好問而好察邇言、隠悪而揚善、執其両端、用其中於民。其斯以為舜乎」



農業政策について考えていると、いろいろと悩むことがあります。
何を守るべきか。国民の圧倒的大多数を占める消費者の食なのか、産業としての農業なのか、それとも農村空間や農業者の生活なのか・・・。結論は「どれも」なのでしょうが、じゃあ実際にどこに結論を持っていけばよいのか。そう考えて、ふと読みたくなって買った一冊。

中庸とは、平均的なことではなく、もっとも適切妥当なこと(いわゆる最適解)であり、かつまた平凡な当たり前のこと、でもあるそうな。

様々な立場の人間の意見を聞き、その真意の善悪を判別し、善いものは取り入れ、悪いものは隠し、善いものの中でそれぞれの主張が反映されるような結論が、中庸。これができるのは聖人君子であり、そうなるために為政者はすべての知識を頭に入れ、私利私欲に眩まないよう自分自身を修め、他人の意見を聞き、実行していく必要がある、という感じ。

東洋的な最適解の決定メカニズムは、聖人君子という「教育」に委ねられており、西洋的な民主主義という「システム」ではなかったんだなあ、という妙な感慨を持ちました。


この本は、孔子の孫に当たる、子思によって書かれたそうな。当時は老荘思想が勢力を強めていて、宇宙の根本原理を説明するという壮大な学問体系を構築していたため、儒学も人間から出発しているのではなく、天道から与えられた性に従う学問なんだ、とその意義付けをはかった一冊、らしい。そのため抽象的な部分が多く、ちょっと理解できないものも多いのですが、自己修養のために読む一冊としては、いい本だと思います。

リーダーや為政者というと、大きなビジョンを示して、人を引っ張っていくイメージがありますが、これはむしろ逆で、人の中からビジョンを探り出し、一人ひとりが全体を引っ張っていく礎を作るのがリーダーという印象。そういうことを考えて、実践していたのですから舜は本当にすごい人だったんですね。実在していようとなかろうと。


2009-02-11

『鎮魂戦艦大和』(吉田満/講談社)




「進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ 負ケテ目ザメルコトガ最上ノ道ダ 日本ハ進歩トイウコトヲ軽ンジ過ギタ 私的ナ潔癖ヤ徳義ニコダワッテ、本当ノ進歩ヲ忘レテイタ 敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ワレルカ 今目覚メズシテイツ救ワレルカ 俺タチハソノ先導ニナルノダ 日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ジャナイカ」



コレ先生ヨリ推薦サレシ本ナル。曰ク若シトキニ読ムベキナリト。
ワレ偶々山手線ニテコレヲ読了スレドモ、最後ニオヨビテ涙止マラズ。

コノ書、文字通リ戦艦大和ノ最期ヲ記シタルナリ。著者ノ吉田満、当時少尉トシテ大和ニ搭乗セリ。帝大法学部カラノ学徒出陣ナリ。大和沈ミシモ、彼幸運ニシテソコヨリ生還シ、終戦ノチホボ一日ニテコレヲ書キ上グルナリ。文体斯クノ如ク文語体ナレバ、簡潔ナリテヨリヨクソノ言ヲ知レリ。コノ文体ヲココデ用イルハ、コレニ倣ウタメナリ。

ワレ二十四ニシテ、当時ノ著者トホボ同年齢ナリ。マタ、ワガ将来役人ニシテ国ヲ思ウノ気持チノカキコトヲ思ウナリ。

纏マリタル感想ハナケレドモ、ワレ国家ト国民ノ関係ヲ再考セザルヲ得ズ。国家ハ国民ノ幸福ノ為ニアレドモ、戦争ニ於イテハ国家ノ目的ガ独リ歩キシ、ソノ犠牲トナルハ国民ナリ。国民ソノ矛盾アルヲ知リテ、ソレヲ理性的ニ理解セント努メ、冒頭ノ如キ論理ヲ考案スレドモ、ソノ声虚シカランヤ。







2009-02-08

『シカゴ・ブルズ 勝利への意識革命』(Phil Jackson (著), Hugh Delehanty (著),中尾 真子 (訳)/PHP研究所)



「姿なきリーダーこそ偉大である」



「バスケットの神様」マイケル・ジョーダンの成功の影には、優れた監督がいた――。そんな文句で昔インターン先の先輩から紹介された一冊でしたが、ジョーダンのおまけだなんてとんでもない。とにかく、最近いろいろと悩んでいたことを吹き飛ばしてくれた、自分の人生を変えた一冊となりました。


著者のフィル・ジャクションは元NBAのプレイヤーで、11年間プレイし、チームを2度の全米制覇へ導いた人間。彼がバスケットボールをプレイする中で感じたのは、「無になること」の意味。自分をアピールしたいとか、相手に勝ちたいとか、多くのことを考えず、ただただプレイに没頭する。すると、試合の流れが見えるようになり、結果的によい成績が上げられる、らしい。

それを応用したのが彼の監督業。NBAって、エゴイスティックな人間が多いんです。華麗なプレイを見せたがり、観客もそれを望む。しかし、バスケットはチームプレイであり、一人がどんなに優秀でも、勝てるとは限りません。そこで、彼はあえて自我を消すようなフォーメーションをチームに導入します。個人プレイではなく、みんながプレイする。みんながリーダーとなり、すべての人間が動くフォーメーション。すると、何かのきっかけで相手チームに隙が生まれた瞬間、そこにボールが回る、シュートがきまる・・・勝てる。それと同時に信頼関係も育まれる。お互いがお互いを尊重し、尊敬する。それが更にいいゲームへとつながる・・・ブルズはそうして3度続けてチャンピオンに輝いたのです。


なんか、いろいろ重なってしまい、涙が出そうです。
この本には、スポーツに限らず、組織のマネジメント、生き方の多くが詰まっている気がします。自分が何をしたいか、ではなく、自分に何ができるか、なのです。真のリーダーとは、リーダーをなくすことであり、真のマネジメントとは、マネジメントをしないように人を育て、仕組みを作ることなのです。












2009-02-07

『ユダヤ人大富豪の教え 幸せな金持ちになる17の秘訣』(本田健/大和書房)



「まず最初に、批判は、単にその人が物事をどう考えているのかという意見表明に過ぎないということだ。君の価値とはまったく関係がない。(・・・)批判の本質とは君が前に進むための向かい風なんだ」



かなり売れた自己啓発&ビジネス書。著者の本田健さんは、育児のためにセミリタイアしているという自由人。そんな生き方に興味を持って、はるか昔に買った一冊でしたが、目次を見て、やっぱり気になって読んでしまいました。

幸せな金持ちになるには17の秘訣があるらしいですが、本質的には、「世の中に感謝して、幸せに、幸せを作る」という感じ。日向に新緑の風が吹き抜ける感じで、単線的ないわゆるビジネス書とは違った、多線的な、穏やかな生き方を提唱しています。

アメリカにいた著者があるユダヤ人大富豪に会い、彼から成功の秘密を授かるところからこの物語は始まります。なんかどこかで聞いた話だなあ、思いつつ、そんな人に会えないかなあと思う日々です。



『人間を幸福にしない日本というシステム』(Karel Van Wolferen (著),篠原勝 (訳)/毎日新聞社)



「管理者たち(アドミニストレーターズ)は、すべての人のエネルギーはなにか大きな国家的事業に結びつかねばならない、といまだに考えている。この幻想を彼らは、彼らが使えることになった政治・経済構造とともに、先達から受け継いだのだ。果てしない産業拡大が日本の国益だと信じる管理者たちは、市民たちの安全と繁栄を最優先事項だとは見ていない――この点では広く意見が一致するだろう。
 彼らは現実から浮き上がっている。省庁の官僚たちや経済界のトップたちは、決まりきったいくつもの思考パターンを逃れて自分の創造性を働かせようとすると、その分だけ不安になり、非現実的(ロマンチック)になる。偉大な国家というロマンチックな空想を日常の退屈な生産管理業務に結びつけ、彼らは、サラリーマンの大群に踏み車を踏ませつづければ国が雲上の高みにもちあがるだろうと信じているかのようだ。それは、想像力が厳しき制限されて困窮化してしまった精神の中に生まれる、『偉大さ』という夢想(ビジョン)の遺物なのである」



ウォルフレンの2冊目。
1冊目は読むのにえらく時間がかかったのですが、これはすっと読んでしまえる一冊。

「今こそ、立ち上がれ日本の市民よ」という感じの、シンプルな主張です。

日本が政治的な社会であること、官僚国家であること、市民の自覚と市民への情報が足りないことなどなど、日本の「システム」を分析した一冊なのですが、なぜか徐々に内察的な読み方になってしましました。


初版は94年11月。村山内閣です。
日本の「システム」が変わったとき、政策を、社会を、どう変えるべきか。
いや、どう変わるのか。

幸か不幸か、そんなことに関われる時代に生まれたみたいです、ね。




2009-02-06

『実践 アクションラーニング入門―問題解決と組織学習がリーダーを育てる』(マイケル・J・マーコード (著), 清宮 普美代ほか (翻訳)/ダイヤモンド社)




「アクションラーニングとほかの問題手法との最大の相違点は、アクションラーニングは多様な視点を持つメンバーの集合体であり、問題の中身や背景に詳しい解決法を求めているわけではないということである。とりわけ複雑な問題を解決する場合は、専門性より多様性が要求されるとの研究結果が出ている。グループが問題を解決していくプロセスで、専門家が弊害を生み出すことがある。専門家はもちろん価値ある情報を提供してくれるが、高い専門性を持っているがゆえに、自分の殻の中で考えすぎてしまう傾向がある。その専門性が往々にしてグループ内での議論独占へとつながっていく。その結果、専門的な知識がないメンバーの間に、専門家から『くだらない』と思われるのでは、という恐れが生じ、自由に質問をしたり、発言をすることができなくなる。さらに専門知識を持たないメンバーは、自分の解決策がもしかしたら専門家によってすでに検証されているのでは、と考えるようになる。加えてメンバーが専門家に依存しすぎたり、リスクを取ることを避けるようになる。・・・実際に問題と対峙している専門家は、答えを持っている専門家より役に立つと言える。グループが問題を解決しようとして、新しい解決策を見出すために変革を求めているとしたら、新しい考えを生み出す自由が必要となる。グループの重要な能力は、合理的でわかりやすい答えというより、むしろ混乱している情報を整理し、解釈し、理解する能力である」



アクション・ラーニングとは「実務を通じたリーダー育成、チーム・ビルディング、組織開発を効果的に行う問題解決手法」。サークル運営入門書でしょう。なぜならば、これが(まじめな)学生団体の運営の芯をよく表していると感じたからです。

「社会的にいいこと」をやっている学生団体って、結構増えてきています。基本的に、彼らに金銭的な報酬はありません。じゃあ何が報酬か?それは報酬は経験と仲間でしょう。仲間は活動する中で自然に生まれるものですが、「よい」経験は必ずしもいつでも得られるものではありませんし、非常に短い期間のある経験を、きちんとした積み重ねを示して、個人にとって「よい」経験に転化させるためには、(少なくとも学生レベルにおいては)何らかの枠組みの設定が必要なのです。

要するに「社会的にいいこと(=社会的な価値)」をやりながら「学習(=個人にとっての価値)」を両立するのがまじめな学生団体の運営の肝であって、逆に金銭的な動機付けやそれに伴う法律上の責任が存在しない以上、この2つを両立しないとこうした学生団体は続いていかないのです。(()のように抽象化すれば、あらゆる組織の原理まさにそうですね)

と、偉そうな感じで恐縮ですが、少なくとも自分ではそう思っていて。

本書はまさにそういう視点で書かれたHow to本。が基本的な認識が違い、かなりのショックを受けました。マネージャーが、要らないんです。

一番の特徴は自分たちが「何を学びたいか」を定義し、行動に入ること。これは、すごい。「何をすべきか」「何が問題か」といった問題解決思考ではなく、「自分たちは、何を得たいか」を各自が考え、それに関連しそう(で解決できそう)な問題を自分たちで選んで、実行する、というのが要点。①ここから何を学ぶか、とか、何がダメか、というネガティブな側面を一切排除したこと、②個人と団体を結びつける意味のマネジメントがいらないこと、の2点で革命的な手法のような気がしています。

・・・いや、実際これはすごい。


ということで、下記は具体的なスキル(とフレームワーク)の抜粋です。
いろいろ重なって、反省しきりでした、ね。


・2つの基本ルール
1、意見は質問に対する回答のみ(と意識づけると他人の意見を聞くようになる)
2、ALコーチはいつでも介入できる(ファシリテーターがいる)

・アクション・ラーニングと問題解決の違い

1、問題
・・・緊急度の高いもの。行動を必要とする挑戦的な課題。
2、グループ
・・・メンバーは4-8人が適切。
3、質問
・・・解決策はメンバーが考える。多様性の中で生まれる。
4、行動
・・・実際に問題を自分たちで解決する。
5、学習
・・・問題解決以上に学習が重要。
6、ALコーチ
・・・学習効果を確認するために介入する存在。問題解決ではなく、学習を目的としてチームの行動をマネジメントする。(学習効果の確認のためにセッションを中断するなど)


・基本的なプログラム

1、グループ編成とスケジュール
2、問題の提示
3、問題の再定義
4、目標設定
5、行動計画の作成
6、実行
7、学習成果の確認

・企業が直面する5つの課題

1、企業が抱える問題の複雑化
2、新しいリーダーシップスキルと能力の必要性
3、成果を上げるチームを迅速に育成するニーズの増加
4、価値ある知識を蓄え、その知識を伝達していく必要性の増大
5、学習の必要性の増大と時間的制約の増加

・5つの課題に対処する最良の手法

1、問題解決
2、リーダーシップ開発
3、チーム・ビルディング
4、学習する組織の構築
5、個人の成長と能力開発

・問題の選定基準

1、重要度が高い
2、緊急性がある
3、自分たちが抱えている問題
4、能力の範囲内
5、少数のメンバーが問題に精通
6、メンバーにとって、有意性がある
7、重要な学習の機会がある
8、グループに権限が与えられていること

・メンバーの選び方

1、コミットメント
2、問題のついて知識と理解
3、実行のための権限
4、精通
5、多様性
6、組織によるメンバー選出
7、セッションへの出席

・グループの規模
9人以上は不適。

・専門家の弊害
「アクションラーニングとほかの問題手法との最大の相違点は、アクションラーニングは多様な視点を持つメンバーの集合体であり、問題の中身や背景に詳しい解決法を求めているわけではないということである。とりわけ複雑な問題を解決する場合は、専門性より多様性が要求されるとの研究結果が出ている。グループが問題を解決していくプロセスで、専門家が弊害を生み出すことがある。専門家はもちろん価値ある情報を提供してくれるが、高い専門性を持っているがゆえに、自分の殻の中で考えすぎてしまう傾向がある。その専門性が往々にしてグループ内での議論独占へとつながっていく。その結果、専門的な知識がないメンバーの間に、専門家から『くだらない』と思われるのでは、という恐れが生じ、自由に質問をしたり、発言をすることができなくなる。さらに専門知識を持たないメンバーは、自分の解決策がもしかしたら専門家によってすでに検証されているのでは、と考えるようになる。加えてメンバーが専門家に依存しすぎたり、リスクを取ることを避けるようになる。・・・実際に問題と対峙している専門家は、答えを持っている専門家より役に立つと言える。グループが問題を解決しようとして、新しい解決策を見出すために変革を求めているとしたら、新しい考えを生み出す自由が必要となる。グループの重要な能力は、合理的でわかりやすい答えというより、むしろ混乱している情報を整理し、解釈し、理解する能力である」

・振り返りの例(ロッキード・マーティン社のヴァーチャル・グループの例)

1、ヴァーチャルに活動したことで、どんな成果があったか?
2、成功にはどんな要素が貢献したのか?
3、できなかったことは何か?
4、ヴァーチャルグループは通常のグループとどう違うのか?
5、今後、ヴァーチャル・グループで働く場合、役に立つ学びはあったか?

・成果を上げるグループに共通する特徴

1、問題解決への強い意志を持っている
2、明確な目標を有している
3、戦略策定で他社との協力に喜びを見出す
4、質問をためらわない勇気を持っている
5、明確で容認された規範がある
(省察的な質問プロセス、意見より質問、学習へのコミットメント、守秘義務、問題解決と行動の重視、ALコーチの権限)
6、メンバーを尊重し、その考え方を支持する
7、学ぶことと支援することへの喜びがある
8、結束力が強く、信頼しあっている

・質問の形式

1、オープンな質問
・・・かなり自由に、答えを決められる(「この行動を起こせば、どんな最善の結果が考えられるか?」)
2、感情的な質問
・・・感情を共有(「仕事をやりのこしたら、どう思うか?」)
3、省察的な質問
・・・より深く考えさせる(「あなたはマネージャーに問題があるというが、問題の原因は何だと思うか?」)
4、核心をつく質問
・・・前提を再考させる(「なぜそのやり方でやらなければならないのか?」)
5、関連付ける質問
・・・システム思考に基づく(「これらの行動の結果はどうなるか?」)
6、明確化する質問
・・・明確化(「具体的にどういうことか?」)
7、探究的な質問
・・・新しい手段が新しい探究へとつながる(「これは○○に役に立つのではないか?」)
8、分析的な質問
・・・状況だけでなく、原因を検証(「なぜそれは起こったのか?」)
9、クローズドな質問
・・・行動が決まる(「反対か賛成か?」)

・役に立たない質問

1、誘導的な質問
・・・意図的に答えさせる(「あなた自身がやりたいことではないのか?」)
2、複数選択式の質問
・・・都合のいい質問になっている

・よい質問を引き出す条件

1、集中力もしくは緊張感、またはその両方を喚起
2、より深いリフレクションを促す
3、考え方の基礎となる前提に対して疑問を抱かせる
4、答えが難しく、質問するのに勇気がいる
5、改革的な思考へと導く
6、すばらしい解決策への扉を開く鍵が含まれている
7、「無知、リスク、混乱がはびこり、次に何をなすべきか誰もわからない状況下」でなされる新鮮な質問
8、支援的、洞察的、てごわい。
9、独り占めではなく、共有に根ざしている
10、自己中心的でもなく、興味本位でもなく、また自分の賢さをひけらかしたり、情報を得たいがためのものでもない。
11、問題提示者自身の考え方、見方をさらけ出す
12、心を開き、より深く考えさせる
13、仮説を検証し、グループがなぜその行動を起こすのかと同様に、なぜそのやり方で行動するのかを考えさせる
14、行動を促す

・意味ある答えを導き出す質問

1、ほかのやり方でできないか?
2、ほかにオプションは考えられるか?
3、まだ使ったことのないリソースは何か?
4、○○をしたらどうなるか?
5、まったく何もしなかったらどうなるか?
6、ほかに方法はないか?
7、なぜ先に進めないのか?
8、もし~したらどうなるか?
9、~を考えてみたことがあったか?

・アクション・ラーニングの学び方

1、具体的に経験すること
2、その経験を観察し、振り返ること
3、その経験を標準化すること
4、標準化した経験を検証すること


2009-02-03

『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』(Stephen P. Robbins (著), 高木晴夫ほか (翻訳)/ダイヤモンド社)



「パス・ゴールという用語は、有能なリーダーは道筋(パス)を明確に示して従業員の業務目標(ゴール)を助け、障害物や落とし穴を少なくすることによりその道筋を歩きやすくする、という確信に由来する」(R.J.House"Path-Goal Theories of Leadership")



「組織行動学」の入門書。組織行動学とは、「組織内で人々が示す行動や態度についての体系的な学問」らしい。この叙述で学問的な危うさが理解できますが、薄く広い内容を扱って概念を詰め込んだ辞書みたいな印象。
主張が、ないんです。

組織のマネジメントには、やはりマネジャーの人間観や価値観が反映されるもの。
いろいろな学問の、いろいろな学者の主張を混ぜている学問なので、そういう「偏り」がないのが残念。
とはいえ、冒頭のパス・ゴール理論には全面的に賛成です。

ということで、下記は有用(だと思った)概念の抜粋。
英語で読みたかったなあ、と思ったり。日本語にすると、硬すぎる。。。

何かメモみたいですみません。




マネジメントの役割:説明、予測、統制

クラックホーン・ストロベックの価値次元
①外部環境:支配、調和、服従
②時の捉え方:過去、現在、未来
③人間の本質:善、混合、悪
④活動志向性:存在、抑制、行動
⑤責任の焦点:個人、集団、階層
⑥空間の認識:私的、混合、公共的

人はなぜ集団に所属するのか?
:安心感、ステータス、自尊心、親密さ、力、目標達成

名目集団法

チームが機能するための3能力
1、技術専門
2、問題解決、意思決定
3、対人的

チームに必要な9つの潜在的役割
1、創造・革新
2、探求・奨励
3、評価・開発
4、推進・組織
5、完結・生産
6、管理・検査
7、擁護・維持
8、報告・助言
9、連結

信頼の築き方

1、自己利益だけでなく、他者の利益のために働く姿を見せること
2、チーム・プレイヤーになること
3、開放性を実行すること
4、公正であること
5、感情を言葉に表すこと
6、意思決定の指針となる基本的価値観において一貫性を示すこと
7、秘密を守ること
8、能力を示すこと

コミュニケーションの役割
1、統制
2、動機付け
3、感情表現
4、情報

異文化コミュニケーションの要点

1、類似性が証明されるまでは互いに異なると仮定する
2、解釈や評価よりも叙述を重視する
3、相手の立場に立つ
4、自分の解釈を作業仮説として扱う

3Mの戦略:構造的変数の設定


ピーナッツのフロランタン




ピーナッツとフロランタンと。



ピーナッツを使って、本当にフロランタンといえるのか?という疑問は残りますが、それなりに満足な味でした。

今回は、フロランタンを作る、という目的があってピーナッツを購入したのですが、問題はピーナッツが所与のケース。要するに「ピーナッツを使ったほうがよいのか、それともアーモンドを買いにいくべきか」という判断が求められる場合です。

この判断が、意外と難しい。ピーナッツにとっては、フロランタン以外の使い道があり、よりおいしく食べられる可能性があるかもしれないからです。しかもほかの材料もフロランタンに投入されるわけで、おいしくないものができたら全体として不幸なわけです。

多くの場合、ピーナッツの使い道に関する判断は、直感的になされます。脳の中では、おそらく過去の経験からピーナッツの味を思い浮かべ、とアーモンドの比較対象を通じて、よい部分、悪い部分を上げて全体的にピーナッツを評価した後、最低限満たすべきポイントを抑えているかどうかをフロランタン側から検証して採用か否か判断しているのでしょう。

その後「ナッツ類」というカテゴリを発見して、その分野から潜在的に採用しうる対象が増える、という風にしてフロランタンの可能性は広がっていくのかもしれません。


お菓子や料理の世界は、「1+1=3」が平気で行われている点で割と深いですね。