2009-04-29

『ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか』(P.F. Drucker著,上田惇生,田代正美,佐々木実智男/ダイヤモンド社)



「つまるところ、成果を生み出すために『既存』の知識をいかに有効に適用するを知るための知識こそが、『マネジメント』である」



ドラッカーの晩年の一冊。
基本的に彼は①論文を書く→②HBRに掲載→③コメントをもらってリバイス→④まとめて一冊に、という流れで本を作っているようです。なので、本に統一性がない部分がたまにありますが、良くも悪くもそんな印象。

「ポスト資本主義社会」を扱った一冊。テーマが壮大なのですが、それに埋もれることなく、鋭く描いています。資本主義社会の形成の歴史から、その本質まで、そしてその後の社会のあり方を時系列で並べ、現在社会の延長線を切り出すという内容。

これまでの社会には中世=騎士・武器、近代=資本家・生産手段、現代=市民・知識、という時代の流れがあること。そしてテイラーが「生産性」という概念を導入し、労働を分解し、評価し、組織することによって生産性向上がすべての分野で可能であると示したことによって、知識を統合・利用する知識社会が到来した、らしい。


要は専門知識が溢れる現代においては、「知る」ことよりも「使う」ことのほうが重要であるとの指摘。そのために企業をはじめとしたあらゆる組織には「マネジメント」が必要であり、知識利用の観点から教育機関も、個人も、再構成されるべきだ、みたいな主張。


留学して思ったのは、優秀な人間は世界中にたくさんいるんだろうけど、優秀な人間の能力を十分に発揮させられる人って、ほんとうに一握りしかいないんだろうなあ、ということ。なんだかんだいっても、「マネジメント」を学びたい、というのは一生のテーマのようです。









2009-04-18

『仕事が10倍速くなる最強の図解術』(開米瑞浩/東洋経済新報社)



図解は思考ツールである。



研修先の図書館にあった一冊。
活字中毒なので、思わず読んでしまいました。たまにはビジネス書もいいですね。

図解術の本。仕事が10倍速くなるかどうかはわかりませんが、わかりやすく丁寧です。

特徴的なのは、図解を核にロジカルシンキング・話し方を紹介していること。

図解は理解支援の手段なんですね。
文章を理解する、思いを伝える場合に、図解するとわかりやすい。
論理的に誤り、抜け、漏れ、飛びがないか、一瞬でわかるようになる。

ちなみに、一般的な「伝え方」の順序は下記だそうです。

statement:物事を単純化しよう
stickey notes:キーワードを抜き出そう
sequence:順番を整理しよう
summary:語りかける言葉で全体を表そう

これはわかりやすい。

図解が理解しやすいということは、人間の脳の認識構造も「図」なのかもしれませんね。






『食糧』(朝日新聞経済部/朝日新聞社)




「今日の文明国の流れは、経済がすべてに優先する政策をとっていることだ。だから経済には聖域はないだろう。しかし、人間には聖域はあるのだ」


1983年の同名新書の文庫版。私よりも古い本ですが、基本的な状態は変わっていない、らしい。

描き出しているのは、環境と経済の両立における行政の無策。
役所がアタマで描いた論理は、過去のサステイナブルな習慣を破壊し、現場の経済では通用しないばかりか、環境への深刻な影響を及ぼしている、と。遺伝子組み換え食品を含め、この時期にここまで農業の実態を抉り取っていることは驚きで、さすが朝日新聞と思ってしまいます。

が、裏を返せば、農業問題や農業の議論はこの25年間、さして変化していないということ。
つまり、問題が先送りされているということ。

何が問題なのか。本質はいたってシンプルな気がしています。







2009-04-05

『やっぱりお昼はおべんとう―まとめづくりとフリージングで』(婦人之友社編集部)



どうしたら料理って、うまくなるの?



最近、恐れ多くも、自ら料理会を開くことが何度かあるんです。
さすがに変なものは出せないので、真剣に料理のウデを上げたいと思ったりして、買った一冊。

91年に初版が出て、08年で36刷を数えるベストセラーの一冊。
料理本って、星の数ほど出ていますけど、こういう類の本は、ブックオフでは置いていないんです。みんな手元に置いておくんだもん。

本書の特徴は、収録しているレシピの多さと、カテゴリーの豊富さ。
素材別だけでなく、「色別」(!)というマニアックなカテゴリーがあり、すごく使えます。
思えばお弁当って、1,2箱で、味も、栄養価も、見た目も満足させなきゃいけないんですから、そこにこめられる技術って、きっとすごいんでしょう。

お弁当用の本ですが、別に普段の食事でも使える内容です。

たぶん一冊を全部作ってみると、ウデがあがるんだろうなあ。。。と思う最近です。





Let's eat vegitables!



週末は常備菜づくりです。


ついに社会人生活が始まったわけですが、3日して分かったのは料理する時間<睡眠時間、ということ。

というわけで、週末を利用して常備菜を作ったのでした、が。

・七福なます・・・これはおいしい。
・人参のマリネ・・・元気になる色。
・中華風甘酢漬け・・・イマイチか。
・野菜のマリネ・・・おいしい。
・ひじきと人参のマリネ・・・ヒットです。
・白菜のしょうが付け・・・微妙。
・大根のはりはり漬け・・・まあまあ。

一週間食べようと思うと、結局マリネ&つけもの系になってしまうのですね。
ミツカンの酢を使い切ってしまいました。

こうすると、緑の野菜が入りづらいということも視覚的に理解。
青菜をゆでて冷凍しておけばいいのか。。。


何だか、料理が趣味でよかったなあ、と思う最近です。







『農業の継承と参入―日本と欧米の経験から (全集 世界の食料 世界の農村』(酒井 惇一,伊藤 房雄,柳村 俊介, 斎藤和佐/農山漁村文化協会)




跡継ぎがいない?それなら、若者を送ればいいじゃない。


・・・という発想は机上の空論だなあ、と思わされた一冊。
シリーズ物の一冊。これは農業の新規参入や継承のいわゆる「後継者問題」を扱ったもの。
日本において、農家を「継ぐ」ことの歴史的な重みと、現状の不人気ぶり、そしてたとえ後継者がいたとしても、そこから健全な経営を行うことがいかに難しいかを描いています。

本書の独自性は、地理的比較の多面性。
日本は北海道とその他の地域、海外は西ドイツ、フランス、アメリカの同じ問題をどう解決しているのかを描いています。いかに相続の際に農地(やその他農業関連資産)の分散を防ぐかなど、それなりには参考になります。

海外と日本での大きな違いは、親子であっても、共同経営者として法的に独立した存在であるらしいこと。継承に関しても、金銭で土地や機械をやり取りする。翻って日本では、たとえ跡継ぎがいて、その人が農業を主体的に営んだとしても、口座は元の経営者が管理していたりして(この辺は農協の問題かもしれませんけど)、法的な継承がうやむやのままになってしまうらしい。

驚いたのは、アメリカでは農業=夫婦で営む一世代限りのもの、という認識らしいこと。
要は、息子や娘は基本的に継がない。つまり、農業を始める人は、親元か知り合いのところで研修→農地をレンタルして就農→たまったお金でどこかの(親の場合だってある)農地を買う・・・みたいなサイクルで回っているらしい。アメリカ人って、先天的に経済学がマインドセットされてるんですかね・・・。

そのほかドイツはマイスター制度があるとか。

一番の学びは、たとえうまく後継者が見つかり、「継いで」もらったとしても、その後の経営を軌道に乗せることは必ずしもうまくいかないということ。特に大規模経営は、生産技術・販売技術にそれなりのノウハウがいるわけなのですが、農業はサイクルが季節に依存するので、学びづらいんでしょうね。ベンチャーだと最初に重要なのはまず営業力であって、商品開発力はその後ずーーーっと先だったりしますが、農業の場合は最初から求められるんだなあ、と改めて農業の難しさを感じたのでした。