2009-08-16

『チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー』(Peter F. Drucker著,上田惇生著/ダイヤモンド社)



「自分は何か得意で何が不得意か」との問いこそ、ベンチャーが成功しそうになったとたんに、創業者たる起業家が直面し、徹底的に考えなければならない問題である。しかし実は、そのはるか前から考えておくべきことである。あるいは、ベンチャーを始める前に、すでに考えておくべきことかもしれない。


ドラッカリアンを自称してはばからない私ですが、知っていても実践できていないことが多いなあ、と思わされた一冊。

タイトルは変革期のリーダーシップ的な感じですが、内容は「マネジメントとは何か?」に尽きます。別にチェンジが重要なわけではなく、組織の使命に適い、そこで働く人が成長し、社会に何か貢献できればよい。

目標は必ず立てるべし、そしてきちんと反省すべし。
自分からではなく、市場から発想すべし。

組織を考えても、結局自分に跳ね返ってくるのが人間の面白いところなんでしょう。




『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』(大前研一訳、ダニエル・ピンク/三笠書房)



左脳から右脳へ。



単純作業はどんどんコンピュータに置き換わって、わずかに残された人的な労働も発展途上国に流れてしまったとき、そして安くて良質なモノで世の中が溢れてしまい、満たされすぎている現在、僕らは何で稼げばいいんだろう?そんな答えを示した本です。

結論は「新しいことを考える人」(ハイ・コンセプト)と「他人に共感できる人」(ハイ・タッチ)のみが価値を持つ時代になる、ということらしい。

本書の特徴は、それを左脳、右脳という対比でもって示していること。右脳的な発想こそが今後のマーケットで生き残る鍵になり、それは先進国のかつての教育によっては満たされえない領域であるそう。

実用性<デザイン
議論<物語
個別<全体の調和
論理<物語
まじめ<遊び心
モノ<生きがい

てことは農業じゃん?と思うのは私だけでしょうかね。
なんだか元気になれる一冊です。



2009-08-15

『企業参謀』(大前研一/講談社文庫)



「この作業には『徹底的』とか『しつこい』と呼ばれるくらいの努力が必要である」



タイトル通り、企業において、まるで戦場における参謀のように戦略を立案するためのノウハウをまとめた一冊。これを文庫にするのは凄い。
訳書でなくてここまで本格的な本が自分の生まれた年に出版されていたとは、驚きです。。。

感じるのは合理的な仮説検証の重要性とそのための発想力&分析を使いこなすスキルの必要性。他の書籍に比べて、仮説の前提となる分析の記述と手法がかなり多い気がします。・・・というか、はっきりいって全然わかんない。

ああ、仮説って、立てて感覚的に優先順位をつけて実施するんじゃなくて、立てたら分析して、検証してから実施するんだなあ、とよくわかるものの、その分析作業は知的な作業だなあ、と思うのでした。PPMの説明は、すごくわかりやすい。


流れているのは、「戦に勝つのは将が強いからであり、負けるのは将が弱いからである」というリーダー論。国政への応用も書いてあり、確かにこうやったら面白いだろうなあ、と。


印象的なのは、問題はすべて異なり、答えもすべて異なる、という前提。
海外に事例を探すのがもっともらしいような気がしてしまいますが、それは逃げ、なんですね。







『仕事の報酬とは何か』(田坂広志/PHP研究所)



「しかし、その『経験豊かなマネジャー』から話を聞いていると、不思議なことに、『見識』が伝わってこないのです。一つの仕事を通じて『スキル』を磨いてきたプロフェッショナルが必ず持っているべき『見識』や『智恵』が伝わってこないのです。こうしたマネジャーが、なぜ、生まれてくるのか。『反省』をしないからです。」



ずばり仕事の報酬とは「能力」「仕事」「成長」らしい。
昔インターンをしていた会社で見かけた一冊。当時はふーんという感じでしたが、働き始めると読み方が変わるものです。田坂広志さんはNPOのマネジメントなどでよく引き合いに出される方。


①給料や地位は仕事の報酬ではなく、自ら求める対象でもない、結果としてついてくるものである。
②本当の仕事の報酬とは、能力の向上、作品としての仕事の創作、そして人間としての成長、である。
③人間としての成長とは、決して失われない、もっとも価値あるものである。

が骨子で、それぞれ「じゃあ、その3つはどうやって得ていけばいいの?」ということを講話形式で書いてあります。師匠を見つけ、師匠から会話や物事を進めるリズム感、バランス感覚の「呼吸」、仕事に対する「心得」、反省のための「着眼」点を学ぶべき、など単純に具体的な話が書いてあり参考になります。


能力は経験によって作られるものだと思っていたのですが、経験は能力によってもたらされるものであり、能力は心構えと反省によって積み重ねられるものなんだと考えを改めました。

仕事にも、王道はないんですね。









2009-08-08

『孫子』(天野鎮雄訳、注/講談社文庫)



「乱は治より生じ、怯は勇より生じ、弱は強より生ず。治乱は数なり、勇怯は勢なり、強弱は形なり」



だいぶ前に読んだ本ですが、印象は「さらっとしている」感じ。

(中国古典には珍しく?)中心概念がないんです。
あるとすれば勝つという結果のみ。

経験則から、戦争とは何か?から、その戦略や将軍のあり方まで、コンパクトに纏めています。かなり実務的。

「こうすればよい」という経験則の集合。内容は、勝てるかどうかの計算の仕方、戦争のコスト、外交の重要性、戦争における勢い、展開の読み方、相手を欺くこと、相手を知ること、地形(環境)を利用すること、火の使い方、スパイの使い方などなど。

基本的には戦争反対で、やむを得ない&勝てる場合に戦争をする、という思想。

勝てる戦争しかしないというのは、当たり前のようで、あまり当たり前じゃないかも。