2009-12-27

『構造政策の理念と現実』(安藤光義/農林統計協会)



正しいのはどっち?



政策効果を検証した一冊。
取り上げらているのは農業経営基盤強化促進法で、まさに課の所管なんですね。

「構造政策」とは、いわば「農地をまとめていきましょう」という政策のこと。
小さな面積で農業をやっても効率が悪く、儲からない。儲からないままだと誰も跡継ぎが生まれず農業全体が立ち行かなくなってしまう。だから儲かる農業のために大きな面積で農業が行われるように、農地を地域の中心人物に集めていきましょう、というのが構造政策の論理。「構造」という呼び名が与えられているのは、農地は有限なので、だれかに集める=だれかが手放す、という全体の構成にかかわるものだからでしょう。

「農業経営基盤強化促進法」とは、市町村ごとに、この「構造政策」を進めるための手段を与えた法律で、その法律について政策の効果がちゃんと出ているのか、ということを具体的な事例を元に検証し、提言しているのが本書。

で、内容は

①もはやコメが儲からない以上、大規模に耕作したって儲からない。だから儲かるために土地を集めましょう、という仕組みは意味がない。(構造政策と経営体育成政策との乖離)
②地域で農地をまとめて「儲かる」仕組みを作ろうと促しても、地域の人は農業を維持しようと思っているだけで、儲けようとは思っていない。(集落営農の目的の変質)
③都市農地では、相続税対策が一番の問題。

という感じ。

言われていることはもっとも、な気がする。
振興行政って、難しいですけどね。









『ルワンダ中央銀行総裁日記』(服部正也/中央公論社)



なんと、復刊されました。



 もう4回ぐらいレビューしている本書ですが、何気なくアマゾンを調べていたら、同じタイトルが2つ。。。待てよ・・・と思ったら案の定復刊されていました。いやー名著はやはり残っていくものなんですね。

見知らぬ国に一人で乗り込んでいって、経済復興計画を作り、実際に復興させてしまう凄さ。
農民、商人、役人、政治家、ルワンダ人、インド人、ベルギー人、アメリカ人・・・あらゆる立場から話を聞き、1つの物事に対する異なる見解を1つの論理にまとめていく想像力。発想から政策立案が直結する鮮やかさ。政治への配慮と戦略。

「なんで役人になったの?」の30%ぐらいはこの本のおかげな気がしています。

以前は絶版で、アマゾンでしか買えなかったのですが、これで書店でも買えるようになりました。もう一冊ぐらい買おうかしら。笑

やはり、目標ですね。




2009-12-19

『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』(木村元彦/集英社インターナショナル)



「無数にあるシステムそれ自体を語ることに、いったいどんな意味があるというのか。大切なことは、まずどういう選手がいるか把握すること。個性を活かすシステムでなければ意味がない。システムが人間の上に君臨することは許されないのだ」



あああ、こんな人になりたい。

日本代表前監督のイビツァ・オシムについての本。
著者は記者であり、ノンフィクションライター。サッカーだけでなく、オシムの故郷であるサラエボについても詳しいため、彼の半生記を綴りつつ、そこで結晶した人間性を浮かび上がらせています。要はブームに乗って書いただけではなさそう、ということ。


民族が入り混じり、内戦で祖国が混乱する中、数学者や医者の道を蹴り、サッカー選手となったオシム。選手一人ひとりをつぶさに観察しつつ、チーム全体やサッカー界すべてを視野に入れ発言し、行動するその姿は、監督として、人間としての一つの完成体である。



思えば、監督って、自分でプレーしないわけです。実際には何もできないけど、確実に何かしている。その「何か」がオシムの行動なのでしょう。


とにかく、発言が、行動が的確すぎる。無駄がない。よく見てる。自分を知り、相手を知り、未来を知る。

服部正也もたぶん、こんな感じなんだろうなあ、と。

別にサッカーはまったく分からないのですが、こういう生き方をしたいなあ、と思うのでした。