2009-04-05

『農業の継承と参入―日本と欧米の経験から (全集 世界の食料 世界の農村』(酒井 惇一,伊藤 房雄,柳村 俊介, 斎藤和佐/農山漁村文化協会)




跡継ぎがいない?それなら、若者を送ればいいじゃない。


・・・という発想は机上の空論だなあ、と思わされた一冊。
シリーズ物の一冊。これは農業の新規参入や継承のいわゆる「後継者問題」を扱ったもの。
日本において、農家を「継ぐ」ことの歴史的な重みと、現状の不人気ぶり、そしてたとえ後継者がいたとしても、そこから健全な経営を行うことがいかに難しいかを描いています。

本書の独自性は、地理的比較の多面性。
日本は北海道とその他の地域、海外は西ドイツ、フランス、アメリカの同じ問題をどう解決しているのかを描いています。いかに相続の際に農地(やその他農業関連資産)の分散を防ぐかなど、それなりには参考になります。

海外と日本での大きな違いは、親子であっても、共同経営者として法的に独立した存在であるらしいこと。継承に関しても、金銭で土地や機械をやり取りする。翻って日本では、たとえ跡継ぎがいて、その人が農業を主体的に営んだとしても、口座は元の経営者が管理していたりして(この辺は農協の問題かもしれませんけど)、法的な継承がうやむやのままになってしまうらしい。

驚いたのは、アメリカでは農業=夫婦で営む一世代限りのもの、という認識らしいこと。
要は、息子や娘は基本的に継がない。つまり、農業を始める人は、親元か知り合いのところで研修→農地をレンタルして就農→たまったお金でどこかの(親の場合だってある)農地を買う・・・みたいなサイクルで回っているらしい。アメリカ人って、先天的に経済学がマインドセットされてるんですかね・・・。

そのほかドイツはマイスター制度があるとか。

一番の学びは、たとえうまく後継者が見つかり、「継いで」もらったとしても、その後の経営を軌道に乗せることは必ずしもうまくいかないということ。特に大規模経営は、生産技術・販売技術にそれなりのノウハウがいるわけなのですが、農業はサイクルが季節に依存するので、学びづらいんでしょうね。ベンチャーだと最初に重要なのはまず営業力であって、商品開発力はその後ずーーーっと先だったりしますが、農業の場合は最初から求められるんだなあ、と改めて農業の難しさを感じたのでした。















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