バブルという必然と偶然。
現代の金融の世界を垣間見てみたい、という思いで手に取った一冊。
経済学部で勉強したはずなのですが、金融はわからないなあ、という危機感がようやく芽生えた最近。
金融市場も、穀物の先物相場やバイオエタノール用の穀物価格で日本の農業とリンクしているはずなのです。
でも、わからないし、考慮する枠組みがない。
専門(といえるかは大いに疑問ですが)のミクロ経済学は、限定された状況での個人や企業一つ一つの行動分析を行う学問。あくまで「限定された」状況の中なので、与件が変われば、行動も変わってしまうのです。与件の大きな変化・・・それが最近の巨大な財政政策でしょう。
しかも、こうした政府の介入は、今までの「市場に任せればうまくいく」的な経済学の思想と矛盾しています。いったい何が起きているのか?
内容は「金融危機の原因を学問と現実で読み解く」という感じ。
著者は慶大経済の教授。一般向けの本。海外の論文やシンポジウムの内容紹介が中心なので、専門家には物足りない一冊でしょうが、知識のない身としてはわかりやすく、非常に興味深い一冊でした。
前半は、学問的な危機の発生メカニズムの解明。
後半は、サブプライム危機の発生の概説。
①管理通貨制度導入以降の経済では、「信用」によって「紙が金に化ける」ため、どうしてもカネ余りの状況にならざるを得ず、あまったカネを投資する主体が発生するため、実需と乖離した価格形成(=バブル)が必然的に発生する。
②バブルやその崩壊という「不確実性(発生が確立では予測できないもの)」においては、一度発生した動きが増幅する危険性を秘めている。これに経済のグローバル化が加わると、ショックは全世界に広がりうる。
③加えて、金融市場の制度設計上に経済の動向を過度に反映させる仕組み(時価会計など)が採用されたこと、不確実性をリスクとして統計処理した制度上の欠陥が組み合わさり、今回の危機が起こった。
④今後、金融制度の見直しが起きることは確実だが、時価会計の見直しの議論を見てもわかるように、価格シグナルの扱い方をめぐっては、たえず循環が繰り返されるだろう。
てな感じ。
「経済も経済論争も経済学も、循環する」という発想が、すごく新鮮。
確かに、農業もそうです。
経済学って、積み重なる学問じゃなくて、きっと回る学問なんですね。
No comments:
Post a Comment