2008-08-02

『独創は闘いにあり』 (西澤潤一/新潮文庫)

















独創と基礎。


高校OBの本です。
現在仙台二高の同窓会長を務める西澤潤一先生。現在の首都大の学長ですね。

東北大学工学部の名誉教授。
「ミスター半導体」とか「光通信の父」の別名があり、日本より海外のほうが有名、らしい。

毎回実家に送られてくる同窓会報に、西澤先生のいかめしい感じのお話が載っているんですね。
気難しそうなおっちゃんだなあ、と思っていたのですが、非常にいい本で驚きました。


内容は自伝&「独創の生み方」。
生まれから研究者までの道のりとその後の数々の発明・発見をかなり詳しく書いています。
記憶が明瞭なんですね。すごく具体的。僕は電気工学は専門外ですが、何かが一緒です。

「俺はこんなに先進的な研究をやってきた」
「日本の学会はダメだ」
「独創とは基礎努力の積み重ねである」


驚くべきは、「問題意識」「仮説」「現場」という、政策立案と共通の言葉が登場すること。
やはりトップで挑戦している人が達する境地は一緒なのでしょうか。

彼はAA型らしい。
道理で感性が合うはずで、山本権兵衛が好きだと言ってました。




結局のところ、独創研究があるか否かの差は、ほんのわずかなもの、らしい。
既存の理論の積み重ねでは得られない壁にぶち当たる。
そこで「予感の持てる仮説」を立てられるか、が勝負の分かれ目になるそうです。

もちろん、既存の理論に反するものはたくさんの批判があるわけです。
その極限状況の中で、自分の頭でどれだけ考えられるか、そこで何かひらめけるか、が重要らしい。

「私の経験からいえば、どんなに大きな発明といえども、常にそれほど大きな飛躍があるわけではない。ごくごく些細な段差に気づいて越えるかどうかで、あとで決定的な違いが出てくる。ふつうの人は、このごくわずかな差に気がつかず見逃してしまう。その注意力は、現場でどれだけ試行錯誤を重ねてきたか、ということで修練される・・・その訓練の積み重ねが多ければ多いほど、緊迫したつばぜり合いに耐えて、目の前の事象を見逃さず、誤たず、判断することができる。いちはやく『わずかな差』を越えることもできる。そして、結果的に『巨大な差』をもたらすことになる。発明発見とはそういうものだ」

注意力(=目的)を持ち、それに通じる基礎(=過去の知識)をくまなく学ぶことで、些細な事象の中で「過去の知識」と「未来の知識」を選別することが可能になり、後者を明らかにすることが発明発見である、ということでしょうか。いわゆる発明発見とは、「作り出す」というよりも、「切り分ける」なんでしょうね。





小学校のころは東北大の工学部に進みたいと思っていた自分。両親も理系ですし。
ミニ四駆にはまっていたり、科学館の発明クラブに所属していたり、思えば理系人間だったんです。

小学校高学年~中学校にかけて、社会科や経済のような「世の中の仕組み」系に興味が出たので、
迷うことなく文系に進んでいましたが、理系に進んでたらどうなったのかなあ、と考える今日この頃。


やってることは違っても、考え方は一緒だった気がします。



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