2008-08-12

『地方分権と財政調整制度―改革の国際的潮流』(持田信樹編/東京大学出版会)













スウェーデン社会の本質。


スウェーデンシリーズの一冊です。
いろいろ読んでいたのですが、結局のところ、本質は財政じゃないのかと思って読んだ本。
編者は経済学部の財政学の先生。やさしそうな先生でした。
いろんな方が各国の財政制度を書いているという論文集。

①巨大な公共部門
・・・政府支出全体がGDPの65%(日本は38%)。ただし、所得移転を除く。
②県・市町村の明確な役割分担と自立
・・・県支出の9割が医療、市町村はほか全部。自治体は7割が自主財源で規模も小さい。
③政治の透明性
・・・公的補助が政治資金源。企業献金はもらわない慣習がある。
④投票率の高さ
・・・80%ほど。

これらをつなげると、「地方福祉」。

結局は、そういうことではないのかと。


税金が重くても、安心・安全を求める国民がいて、180年間戦争がなかったことへの政治的な信頼があるがゆえに、自らの意思を投票行動でリクエストする伝統があり、それを実現する政治がある。そして高負担・高福祉を達成するための制度として、明確な自治制度が発達した、

と考えていたのですが、

福祉国家の形成期の1960年代、スウェーデンは国ではなく、その役割を地方に任せた。その結果、地方では福祉サービスを賄うために増税が行われた。増税緩和の法律は何度も作られたが、結局は福祉サービスの享受が優先され、財政制度もそれを支えるように変化してきた。福祉サービスの供給はほとんどが公共部門によるため、市民の監視が厳しく、サービスが向上した。



スウェーデン財政の特徴に「水平的財政調整制度」というものがあります。
平たく言えば、「自治体間の格差是正」。ふるさと納税的な発想かもしれませんね。裕福な自治体が、貧しい自治体に歳入を移転する、ということ。

要は「地域が自前で公共サービスを提供する」という目的があり、福祉や教育の供給主体が公共部門だけであったことから、その重要性が増し、結果的に、手段として自治の仕組みや財政制度や政治への参加意識が高まっていったのではないか、というのが現状認識。



まあ、正解なんてないんですけど。













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