「こうしたことから考えても、国際関係は緊密な複雑さを加え一朝事ある場合、一国だけが相手でないことがおこる恐れがある。強力な軍事力をもつ某国に、さらに劣勢な1、2カ国が連合することも十分考えられ、わが国としてはこれら連合国が東洋に派遣できる艦隊の勢力程度を予想した上で、これにまさる艦隊を備えなければならない」(山本権兵衛、帝国海軍としての将来の国防方針より抜粋)
大学近くの古本屋で、衝動買いした一冊。
500円はうーん、ちょっと高かったかな、という印象。
山本権兵衛の生涯を日本史とともに綴った一冊です。
日本宰相列伝というシリーズものの一編。
『坂の上の雲』を読んで感じるのは、日露戦争の勝利の半分の功績は山本権兵衛にありそうだ、ということ。彼がロシアに物量で勝るだけの艦隊を揃え、東郷平八郎を総司令官に抜擢したのですから、それは当然でしょう(この評価は、あくまで司馬遼太郎視点でしょうけど)。
奇跡って、奇跡的に生まれるものじゃない。
その思想や行動の背景を探ってみたくて、たまたま見かけたので購入したのでした。
甥っ子が筆を執っているので、予想以上に歴史的記述が多く、やや冗長。人となりを知ることができる部分は僅かでしたが、いろいろ勉強になりました。
①分をわきまえる
②論理的に反論する
③全体が見えている
④生活リズムがきちんとしている
①議論において、自分が専門外のことに関しては、容易に発言しない。仕事において、自分が担当外のことに関しては、積極的に関わろうとしない。こう書くと単なる役人体質ですが、要は自己の能力や立場をわきまえ、無駄な議論はしない、ということ。逆に自分がすべきことはきちんとやる。容易に主張を曲げない、ひるまない。
②多少、議論の描写が出てくるのですが、すべて誰かの発言に対する反論。ものすごい遠いところから議論して、相手を説得する印象。当時は国の存亡が第一だったわけで、そこに焦点を合わせれば合意形成は図れたのでしょうけど、極めて理路整然としていて、欧米的。「話せばわかる」ということを実践する姿勢。
③例の日露戦争に向けての国防方針に関しての答申が冒頭の一節。将来が見えている。列強の力関係にあって、日本の立場や実力を、合理的に理解している姿勢が垣間見えます。
④几帳面な性格だったらしい。朝は夏は四時半、冬は六時に起床。生活は質素。酒もタバコもやらない。身だしなみは気をつける。
人生としては、
23歳の時に西郷翁に会い、海軍に一生を捧げる覚悟を決めたそうな。
加えて、25-27歳の間、海軍兵学校の航務研究のために欧米に赴いています。
だから、世界が「見えた」んでしょうね。
一番印象的なのは、顔。
若いときの顔、すごいですよ。
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