2009-01-13

『農業経済学講義』(佐伯尚美/東京大学出版会)



An organic integration?



農業経済学の定番教科書です。初版は1989年、改訂されないものの、未だ読まれ続ける一冊。
農大OBの方と、ゼミの先生に「読みなさい」と言われていたものの、読まなかった自分は本当に愚かでした、というのが読後感。他の教科書に比べて、情報量が多く、とりわけ日本の農業政策(~1985年ごろまで)について詳しいのが特徴。ちょっと玄人向けかもしれません。

農業経済学の定義から始まり、各国の農業の発展段階、国内農業政策の歴史、各種の論点(担い手、農地、農協、農業金融、GATT・・・)と内容は盛りだくさん。すべて最低限のページ数で最大限の情報が盛り込まれています。

農業政策の歴史は、点では見えても、面では見えないもの。
それを物語のように滑らかに伝えてくれるため、非常に分かりやすい。適宜図表を用いて、数字で示してくれているのですが、ほぼすべてが農水省のデータからの自作の表なのです。

これを書くにはどれほどの蓄積と思考と想像力が必要なのかと思い、本当に本当に頭が下がりました。


で、肝心の農業問題への視座ですが、「どうすればいいんだろう」というのが感想。

複雑なんです。すべてが。イメージで語れば、川のようになっていて、本流は1つのはずなのですが、支流が多く、バイパスを作ったりしてもいて、結果的にそれぞれがうまくつながっていない。もっと重要なのは、1つ1つの支流は非常に合理的にできていて、その瞬間のそれだけを見ると、完璧なのですが、全体では不完全なのです。問題の本質が部分ではなく、全体(システム)にあるのです。

直感的には、こういうシステムは人間が設計するのではなくて、市場のメカニズムに任せるというのが正解なのかと思いますが、これだけ歴史のある農業政策でそんな机上の空論は通用しないだろうと思うのでした。と抽象論で語っても意味がないので、もっと勉強しないとね。



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