2009-01-16

『農業問題の経済分析』(奥野正寛,本間正義/日本経済新聞社)


policy persistance



食料・農業・農村基本法(または新基本法、1999)制定にあたっての検討委員会(食料・農業・農村基本問題調査会)の研究結果をまとめた論文集。調査会の目的は「農業ビックバン」と呼べるだけの改革を起こすことにあり、その論理補強の実証研究が中心。基本的にはミクロ経済学の枠組みを使って農業を捉えているため、論文集ですが違和感が無く読めるのがすごいところ。著者はいずれもビックネームなので、アカデミックでありかつ網羅的である点でいい本だと思います。


答申によれば、食料・農業・農村に対する国民の期待とは以下の6つであるそうな

①食料の安定供給の確保
②安全・良質で多種多様な食料の供給と食品産業の健全な発展
③我が国農業の体質強化と合理的価格での食料供給
④農業の自然循環機能の発揮
⑤農業・農村の多面的機能の発揮
⑥農村地域の地域社会としての維持・活性化
⑦食料・農業分野における国際貢献

全部入ってるなあ・・・とかなり驚いたのでした。が、新基本法ではすべてについて適切な対策が盛り込まれたわけではありません。この辺が理想と現実の違いなのでしょう。


「政策の持続性(policy persistance)」という概念を初めて知りました。要は政策が政策課題を再生産してしまうということ。農家の保護が弱小農家を温存してしまうため、さらに農家を保護しなければならなくなり・・・ということ。確かに、日本の農業は典型例。


読む前は本書とまったく同意見だったのですが、これでは産業としての農業は守れても、農村は守れなそうだなあ、というのが読後感です。うーむ、難しい。






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