2009-01-28

『蕨野行』(村田喜代子/文春文庫)



シアワセ?



うーん、なんでしょうね。こういう作品はどういう風に形容したらいいんでしょうね。
完璧すぎて、自分の批評で汚したくない、という感じですが、一応。





姥捨ての話。場所は江戸時代末期の貧しい農村。押伏村には、60歳を越えると蕨野という丘へ棄てられるという掟があり、そこに棄てられた9人の老人のお話。「あとは死ぬだけ」の生活のはずなのに、何とか生きようと努力する老人たち。次第に生き生きとして、そして死んでいくのです。方言のような独特の文体で書かれていて、すぐ引き込まれてしまう。



凶作で食糧がなくなると、生まれてきた赤子を殺す。赤子は再び生まれる瞬間を待ち、亡霊となって妊婦に生むように諭す。ようやく生まれても、待っているのは貧しくつらい日々。そして老いれば蕨野に棄てられる。そして死ねばまた赤子に生まれ変わる。。。

ゆたかな現代とは違って、生も死も、「軽い」んだなあ、と。
自然環境が生きるか死ぬかを決めていたんだなあ、と。



先生から紹介された一冊。曰く、「社会福祉、福祉国家などを考える刺激にもなる」とのこと。

要は幸せ、ってなんだろう、という話なのかなあ、と。残りの人生、死ぬだけだとわかっていても、仲間がいれば、食べ物があれば、おしゃべりがあれば、目的があれば、人間って幸せになれる生き物なのかもしれませんね。必要なのは年金制度でも、介護医療保険でも、老人ホームでもないのかもしれない。



巻末で、辺見庸が非常に秀逸な解説をしています。いやあ、勉強になりますね。





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