2008-01-07

『経済学の使い方―実証的日本経済論入門』(三輪芳朗,J.マーク・ラムザイヤー/日本評論社)













経済学は「使える」か?




「先生、早速ですがどんな研究をなさっているのか教えてください」

「いやあ、研究といっても君たちにわかるかね。我々は専門家の世界で生きてるからねえ」



昔、大学で新聞を作っていたころの、一番最初のインタビューの冒頭。
・・・当時1年生ですよ。初取材ですよ。当然、びびりますよね?

そんな思い出からはや4年が経とうとしていますが、いまだに専門家の世界とやらは遠いようです。
アクの強い先生だなあ、と思った記憶がありますが、この本もそんな感じ。



「経済学の使い方」というこの本。
どう使うのか、というと、「通説を鵜呑みにせず、きちんと根拠を確認して検証する」ということ。

「『経済学』とは世の中の経済現象を普遍的な理論に照らして解明するサイエンスである」

それを、戦後の日本経済の「通説」「通念」を具体例に示しています。具体的には、傾斜生産方式やメインバンクシステムなど戦後日本の経済発展の原動力といわれる「特殊性」を示す事項(主に官僚が引っ張ってきたんだい!的な意見です)を、これでもかこれでもかというぐらいに批判し、根拠のなさを根拠づけて示しています。基本的に主張はずううっと同じなのでささささっと読めます。

「ヤミ市も規制できない政府に、どうして市場機能よりも効率のよい資源配分ができたのか」
「高度成長期に企業を支えたメインバンクは、なぜバブル期では急にその力を失ったのか」

そう考えると、確かに教科書に書いていたことはおかしい気がする、というのが感想。
言っていることはもっともで、何でいままでそういう問いかけがなかったのか不思議です。
確かに教科書にはそういう筋道が書いてあったけど、理由は書いてなかったもん。

本書では「ここまでやったら嫌われる!」というぐらい通説の批判の批判に徹底的に批判的で気持ち悪いぐらいですが、しばらくすると慣れるから不思議です。

別に「役人は不要だ」「日本経済は発展すべくして発展したのだ」と言っているわけではないのです。
ただ「通説は正しくない」といっているだけ。

とにかく、経済学とは歴史学ではない、というかみんなが思うほど使える学問じゃないよ、ということがよくわかる一冊です。(てかこれだけ再現性のない学問は、果たしてサイエンスなんでしょうかね)

ちなみに、こうした根拠なき通説が受け入れられた背景は、マルクス経済学(あまり実証を重んじず、ストーリーで語りたがる経済学)が日本で主流だったことにあるらしいですが、これもこの本に基づけば根拠がないので本当かどうかわからない、ということになりますね。

あ、後ろのほかの話題(独禁法規制とか)が超面白いので、そこだけでもオススメです。


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