2008-01-09

『日本農政の50年―食料政策の検証』(北出俊昭/日本経済評論社)













農政と農省。



三文会で「ネコでもわかる農業政策入門」という発表をやったので、その参考文献として通読。


「農政」とは、一種独特のニュアンスを持って語られる(らしい)言葉です。


というのは広いから。

「農業」と一口に言っても、意味するのは様々です。食べ物そのものであったり、食べ物を作る産業であったり、農村という地域だったり・・・。しかもそれぞれ関連はあっても、目指すものは違ったりするから複雑です。


加えて、「政策」というものも、書いてあることと実施されたことと達成されたことが微妙に変化し、かつ評価に何十年もかかる意味で難しい。


そんな難しさの2乗の「農政」を、この本は戦後から半世紀、特に食料政策を中心に追っています。
超簡単な説明は、こちらを参照してもらうということで、感想を3つ書いておきます。

①変わらない目標、変わらない手段
・・・1年前、「農業の問題は20年前から変わっていない」と公言したことがありましたが、結構本当でした。むしろ50年ぐらい変わっていない。基本的なポイントは「いかに(農作物の)コストを下げるか」「いかに(生産者の)所得を上げるか」の2つ。最近は「いかに残していくか」に統合された感がありますが、基本的な視点は変わりません。役人がビジョンを示し、役人のビジョンにあった農家が保護される、という構図もずっとのようです。政策手段も補助金誘導であまり変わっていない。


②変わる経済、変わる国際情勢
・・・一方、変わってきたのが農業以外の状況です。特に工業生産性と通貨価値の上昇。農業だって、決してサボっていたわけではなく、生産性は他の先進国と遜色ないぐらい伸びているのです。しかし、工業はそれ以上だった、ということでしょう。世界情勢も自由化に大きく動いています。


③農業から発想しない
・・・これは持論。本を読んでいて思うのは、どの政策も良く考えられていて、文句のつけようがないこと。過去の政策だからあれこれ振り返って批判もできますが、文面だけ見たらどれも100点です。しかし、文面どおりにならなかったのが現実。足りなかったのは「農業をどうするか」を考えすぎて、「社会の中で農業がどうあるべきか」を考えなかったことではないかと思うのです。


農業なんて、所詮GDPの1%です。
残念ですが1%のために他の99%が動くことはありえない。しかし、過去の(失敗したとわれる)政策は、それを考慮していない空気が濃厚です。99%の変化の中に、1%の位置づけを明確にしていくことが重要ではないでしょうか。世の中の役に立たない農業なんていらない、と思わないと本当にそうなってしまう気がしてなりません。


という考え方はドライすぎるかなあ。
具体案は内定したら本格的に考えるとします。







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