「豆を2つ蒔いておいて、いいほうだけ育てる。賢いやり方でしょ?」
いきなり痛い格言ですが、本書の結論はそんな感じです。
主人公は今で言う機関投資家。
貧しい農家出身の男が、米問屋から米の仲買人、株のブローカーにのし上がり、
現場の情報を重視し、常にリスクを分散させ「そこそこの勝ちを手堅く積み重ねて百戦百勝」
というサクセスストーリーです。モデルはヤマタネ証券(現三井住友グループ)の創業者、山崎種二。
商売に不確実性は付き物。それをどうなくすかは商売の本質そのものです。
印象的なのは、勝負を考える際に、情報を最重要する姿勢。
流行や人気ではなく、モノの動きで判断する。
人の意見ではなく、自分で見に行き、確かめる。
相場の変化の背景、相手をあらゆる手段で突き止める手段の豊富さと行動力はすごい。
と、いろいろ書いてあるのですが、なぜか心に響きません。
城山三郎に珍しく、サクセスストーリーだからでしょうか。
何だか、どこか薄っぺらい。百戦百勝して、だから、それで、何なんですかね?
行動原理の明確さは分かります。
だけど、あまりに合理的過ぎて、現実味が無い。人のにおいがしない。
なんだか教科書を読んでいるような気になってしまうのです。
教科書どおりに行かないのだから、面白いのです。
経済というドライな世界に熱い志を突き通していくから、面白いじゃないんでしょうか。
ビジネスのエッセンスは、ビジネス書でいい。
非合理的な、経済学では収まらない行動原理があるからこそ、人生は面白い、はず。
経済人を描いた経済小説って、プラモデルみたいですね。