2011-03-06

『明治という国家』(司馬遼太郎/日本放送協会出版)

「明治時代とすると、流動体みたいな感じになりますが、「明治国家」としますと、立体的ないわば固体のような感じがするから、話しやすいんです。そんな国家、いまの地球上にはありません。1968年から1912年まで44年間つづいた国家です」



さっきの「米生産調整の経済分析」の推薦図書(笑)
荒幡克己氏が、本の中で「明治という国家」に出会って(本の中では「邂逅した」とまで言われています。笑)、使命感を持ったのだとおっしゃっていたので、それならと思って購入した一冊。

確かにすごい本。歴史観変わるわ。


本の内容を一言で言うと「司馬遼太郎が偉そうに語る「明治国家」の実像」。司馬遼太郎って、すっごい調べまくってから小説書く人なんですね。歴史小説家はみなそうなんでしょうけど、彼の徹底振りは(特に「坂之上の雲」。)すごい。で、そういう小説家としての活動を通じて見えてきている「明治国家」について「お前ら、明治ってのはな・・・」と、まるで同時代を生きてきたかのようにみずみずしく語る、というのがこの本。

歴史の教科書ではまるで神様のように出てくる明治の政治家たちが、司馬遼太郎視点でダメ出しされていく本(笑)。これは歴史観変わりますわ。幕末のころって、本当に血なまぐさい時代だったんですね。国のためがいつしか藩ため、自分のためになっていく・・・。

で、ほぼ唯一綺麗なのが坂本龍馬と西郷隆盛。とくに西郷隆盛への肩の入れようは半端ではなく、「司馬さん、そんなに褒めていいの?この人、征韓論と西南戦争でしか教科書に出てこないんですけど。。。」と突っ込みたくなるんですが、どう考えても教科書を書いている人よりも司馬遼太郎のほうが持っている情報は多そうなので、軍配は彼に上がりそうです。


別に歴史に名を残したいとか思っていわけではないし、特にそういうことを公言する人間はあまり好きではないのですが、「司馬遼太郎(みたいな人)に褒められる行政官でありたいなあ」などという、考えてみればかなり大それたことを思いたくなってしまう一冊です。笑


あ、冒頭の引用部分を切り取った理由は要は「明治のときだけ日本史の中で、突然変異的に生き生きした国だったんだよ」っていうことを司馬遼太郎が一番言いたいんだろうなあと思ったからでした。坂之上のなんとかですな。




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