2011-03-06

『米生産調整の経済分析』(荒幡克己/農林統計出版)

今世紀一番の米の生産調整の専門書。



行政がやるべきことを1人でやってみた、的な本。

職場の先輩に薦められて読んだ本でしたが、すごい。

日本の米の生産調整に関する専門書です。一般向けの本としては質量ともに最高レベル。
これまで何ゆえに生産調整が行われてきたのか、そして現在はどのように行われているのか、未来はどうすればよいのか、を過去の文献や聞き取り、そして著者の専門である計量経済学の視点で明らかにし、あるべき政策の評価軸を定めた上で、現実的な施策を提言しています。

著者は元農水官僚であり、また農業経済学の分野では著名な米メリーランド大での留学経験を持ち、そこで師事をした教授との共同研究としてこの著作の構想を行ったのだとか。学術的に価値があるのはその「生産調整をどう評価するか」のメソドロジーの方であり、それはそもそも市場均衡状態を実質減反率を仮定した上で関税はそのままで定義して市場価格を求めて、その後直接支払いの移転率を・・・と、私もちゃんと説明できません(笑)



みんなきっと、減反はやめたいんですが、やめらんないわけです。「おかしいじゃないか。やめるべきだ」と言うことはものすごく簡単なわけですが、実際どうやるのかが難しい。そのためには過去の経緯を総ざらいして、その上で現在の状態を定義して・・・と考えるとこういう本になるんだろうなあ・・・と。


結論は財政負担と市場のゆがみの少ない手法で、ソフトランディングさせることに尽きるわけです。
それはなんかもうアプリオリに決まっている話であって、別に分析とマッチしているかと言われるとそうでもない気がするんですが、国の政策なんて所詮そんなつまらなーいものであって、鮮やかな手法を大胆に取り組んでいくのではなく、みんなが当然に思っていることを当然のように抜かりなくやっていくのが行政なのかな、などと改めて思ったりもします。

こういう本は本当に貴重ですね。






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