2009-03-14

『道は開ける』(D・カーネギー著, 香山晶 訳/HD双書)



how to stop worrying and start living



原題を直訳すれば、「悩むことをやめて、いきいきとした生活を始める方法」でしょうか。

『人を動かす』と共に、有名なD・カーネギーの著作。
この二冊しか書いてないのかと思いきや、彼はほかにもたくさんの本を書いてたんですね。
が、この二冊が残った、というのが訳者の巻頭言。詰められた情熱が、違うのです。


大学卒ながら、ゴキブリがうごめく極貧生活の中で暮らしていた若き日のD・カーネギー。
ある日、思い立って、仕事をやめ、自分のやりたい仕事として散々断られた挙句、ようやく探し当てたのが、YMCAの夜間学校の「話し方教室」。純粋に「無駄なく、スキルを積みたい」という学生のみが参加する教室。意味のない、つまらない話なら学生はすぐに出て行ってしまう・・・。そんな講座のために、彼が自ら作ったテキストがこの本。

書かれていることは「一日一日を生きよ」(過去や未来の心配をしても、生きているのは居間でしかない)、「悩みの原因を突き止めろ」など、基本的な内容なのですが、思えばこれがそんな「基本」を形作ったのでしょうね。そう考えるとこの類のマーケットの今日の発展ぶりには目を見張るものがありますね。


「現在に、自分に、与えられたものに満足しよう」


そんな思想が見て取れます。

基本的に、悩むのは「今」を見れていないから。自分がわかっていないから、なのです。



「自己啓発本は、ある時期に卒業、という類のものではなく、定期的に読んで自分の変化を確かめるものなんだ」

ということで、自己啓発本も、いろいろ読んでみようという最近です。
といいつつ、読むのはやっぱり古典ですけど。









2009-03-10

『「知の衰退」からいかに脱出するか? 』(大前研一/光文社)



「あなたは地球を商売の道具にする一方で、この地球に何を返していますか?」



日本人よ。お前らはバカだ。いや、個人としてはそれなりに賢いかもしれないが、この国自体がバカなのだ。政治家も、官僚も、マスメディアも腐ってる。というか時代遅れなんだ。俺は昔からこの状況に警鐘を鳴らして一時は政治家になってやろうと思ったが、お前らはバカだから俺のプランを理解できず、いまだにバカな政治家の下に、あくせく働かされている。アジアのほかの国では俺の考えが受け入れられ、発展しまくってるっていうのにな!ジャンプが悪いんだ。別にゲームが悪いんじゃない。日本は間違いなく没落する。この腐った国から、IT・英語・ファイナンスを身に着けて、一人ひとりが抜け出してほしい。必要なのは古典なんかじゃないんだぜ。俺はそのために大学を作ったんだよ。


という感じ。
基本的に「日本国民啓発書」ですが、なぜか「大前研一の半生」にもなっているという不思議な構成。
要するに、それだけ熱意を持って書かれているということでしょう。

大前研一って、もともとは原子力工学の科学者だったのです。早大理工→東工大→MITと進んで、政府のお抱え研究者になりかけてそんな自分の将来にうんざりして、マッキンゼーに渡った、というところまでは知っていましたが、その後はしらなんだ。偉い人ですよね。これだけ世界中で仕事しながら「日本のために」働いてるんですから。

政治家や官僚の無能振りを見るに見かねて政治家になろうと志したが、問題の本質は国民がバカだった、というお話。
だから本を書いて、学校を作って、「分かる人だけでもいい」と活動している、らしい。

「いろいろわけの分からんことを語る、頭のよさげで無内容な人」というものすごく穿った見方をしていたのですが、一冊も著作を読まずにそんなイメージを持つ自分こそ「バカ」ですね。

こういう人だったんだなあ、と彼の半生が透けて見え、多少感慨を覚えました。
本心は分かりませんが、非常に分かりやすい生き方。考えるだけでなくて、実行し、失敗し、成功し、次にどんどん進んでいる。考えることとやることには無限の隔たりがありますから、これは本当にすごいもんです、ね。

フローは無課税にして、ストックに課税する、とか経済学部的には萌えるのですが、そんなアイデアは昔から提案していたんですね。すごいもんです。

・経営もwikiになる
・アウフヘーベンできる仕組みがリアルにはなく、ウェブにはある
・④できる人間を連れてくる、のがリーダー
・どんな国からも学ぶべきである
・21世紀の教養とは、実践型の知識であり古典ではない
・サイバースペースの理解が必須

いろいろ「へー」と思いました。


ただ、大前研一だから、これでいいのです、よ。

政策の成果は歴史が評価するしかない。

どんなエレガントなモデルで、ずば抜けた政策を作っても、理解されなければ実行されない。実行されなければ意味がないのです。理論だけでなく、理解してもらうことも、実行をきちんと促すことも、結果を監視することも、それを評価して・・・といろいろやることがあるんだなあ、と考えると多少欝ですな。ビジネス的な政策って打てないんでしょうか。


「そうだ、僕はユニークな生き方をしよう」が本書の副題ですが、本書に紹介されていることの実践は決してユニークじゃないんですよ、というのが著者の主張なのになあ、とか思ったりしました。繰り返すようですが、主張には基本的に賛成で、言うことがないのです。オオマエケンイチモードになってしまってはいけないのですが、理解できないのか、と馬鹿にされるのは悔しいのです。その辺、いやらしい書き方かもしれませんね。


amazonによれば、初版は私の誕生日という運命的な一冊。
たしかに、それぐらいのインパクトはあったかも。






『マネー力』(大前研一/PHPビジネス新書)



ファイナンス、マジでやらないと、やばいかもしれない。



お前ら、国債残高がGDPの2倍近くある国の通貨なんて持ってていいのか?円はお金じゃなく、単なる地域通貨なんだよ。常識的に考えて規律のあるユーロのほうが信頼できるに決まっているだろ?高度経済成長期とその後のバブルに侵されて、日本はすべてが腐ってるんだ。大学の教育なんて無意味。これからはITと英語とファイナンスを勉強しないと、気づいたら負け組みだぞ。

・・・てな結論。後半は自分のBBT大学の講座紹介なのでちょっとがっかりですが、「本当にそうですよね」という感じ。基本的に、賛成です。

ユーロのみが規律ある国際通貨であり、今後はその価値を増すはず、というのはそれだけで考えれば確かにそのとおり(財政赤字がGDP3%以下、債務残高GDP60%以下でないとユーロを導入できず、もし離脱すると通貨の信用が極度に落ちる可能性があるので、結果的にどの国も財政規律を守り、通貨価値が安定しうるということ)ですが、柔軟な財政政策が行えないというデメリットもあるわけですから、一概にはいえないはずです。まあ、財政政策の有効性を疑うなら確かにポートフォリオ理論的に、合理的ですけど。

と細かいことはいいとして、「国民よ、賢くなれ」というのが本書のメッセージ。
提案はミクロであればミクロなほど意味を持つと思っているので、これはいいですね。
勝間和代は大前研一である、と書いてあった記事をどこかで見ましたが、これを読む限り、本当にそうでしょうね。


思ったのは、「ああ、見ている層が違うんだろうなあ」ということ。
いわゆる「ファイナンス」の視点なんでしょうか。自分の頭に、こういう考えができるソフトウェアが入ってないのです。見えないものに毎日翻弄されているようで、最近、とても気持ち悪いのです。経済理論に基づく政策提案はそれなりに理解できるのですが、はっきりいって、それ以外は理解できないんです。。。すみません、ミクロ経済学だけやればとりあえず経済学部と言えると思った自分が愚かでした・・・。ということで、将来の勉強の仕方を変えますね。


驚かされるのは、彼が世界各国の現状を生で見て、体験として語っていること。
理論がわかり、現実が見え、そこから自分で考えられる、というのは基本的ですが、王道ですね。

そういう風に、考えられるようにならないとね。











『農業政策』(豊田隆/日本経済評論社)



経済学的に農業政策を記述する。



そんな印象の本。さっと読み終わるはずが、ずるずるとかかってしまいました。

グローバル化の中で、農業の非市場的な価値も考慮しながら、世界や日本の状況を整理した本。多国籍企業アグリビジネスから、EU・アメリカ・日本の農業政策の対比、日本の農業改革、世界の環境政策・・・などなど、扱うトピックが多く、とにかく情報量が多い。

ああ、こんな感じだなあ、というのが読後感。
「東アジアと共生する農業・環境・食料政策」という結論を持ってきているあたりが新しいか。ただし現場に即した根拠があるわけじゃありません。

純経済学的に考えると、確かにこういう結論になるんです。が。

情報量の割に、何か空虚な印象がぬぐえないのはどうしてなのでしょうか?
経済学で計れないものを無理やり経済学で考えているような気がしてしまう。。。
といいつつ、そうしてくれないと読めないのは不幸なものです。

必要なのは、政策でも政府でもなく、農業者でも消費者でもなく、企業なのかもしれません。ビジネス。





以下、メモ

・ドーハ・ラウンドの日本政府モダリティ案は極めて合理的
①農業の多面的機能
②食料安全保障
③農産物の輸出入ルールの不均衡是正
④開発途上国への配慮
⑤消費者・市民社会への配慮

・アメリカでは、米の生産費の71%が財政補填
・地域開発政策の基本理念はステープル政策
輸出向け一次産品を交換しながら経済発展を目指す
・麦作面積は50年の178万haから17.5万ha(73年)に減少
・米国サンキストは家族型農業者が所有する農協


2009-03-02

『ツァラトゥストラはこう言った 上/下』 (Friedrich Nietzsche (著), 氷上英広 (訳)/岩波文庫)



「あなたがた創造者たちよ!この『・・・のために』を忘れることだ。こうした『・・・のために』『・・・の目的で』『・・・の理由で』などでは決して行わないということを、まさしくあなたがたの創造の徳は要求しているのだ。こうしたいつわりの小さな言葉に対して、あなたがたの耳をふさぐべきだ」



「教養豊かな知識人」に憧れて、手に取った一冊。
話の折にニーチェが出てくるとわからなくなるし、はるか昔に友人から紹介されてもいたので。

よく分からないなあ、というのが感想。
が、すごいことだけは分かる。考えすぎ、詰めすぎ、構成しすぎ、分かりにくく書きすぎ。でも、すごい。


きちんと理解できない。たぶん1%も読めてないんだろうなあ、と。ドイツ語も分からないし、ゆえにルター版の聖書も読めないし、ショーペンハウアーも知らないし。教養を深めるということは、本当に暇な人か、頭がよくて余裕がある人にしかできないことなんですね。

超人、永劫回帰・・・もっと自然に、楽しく、何度生きても良いように生きる、みたいな概念はそれとなくわかるのですが、そんなのは解説書を読めばいい話。
ニーチェ本人がよく分からんのです。

何のためにこれを書くのか。彼は誰に何をしてほしいのか、何がしたいのか。
これを書くことで、あれだけストイックに思考する彼の何が満たされたのか。
どれだけの勉強量と、思考の鍛錬をしているのか。
そんなに、やすやすと書けるもんじゃないんですから。ありえない切れ味ですよ。


きっと哲学をやるよりも、子育てするほうが、人間についてよく分かるんでしょう、ね。
昨日たくさんのちびっこと触れ合って、すごく思いましたとさ。




『恋愛投資概論』(Ferdinand Yamaguchi/ソフトバンククリエイティブ)




「恋愛は投資である」



本当に、そういう本。じゃあ、リスクとは何で、リターンとは何で、レバレッジとは、デイトレードとは・・・と想像が膨らみますが、本当にそういう書き口。

人間生活をビジネススキームの中で記述する、というのは、よくある話。
まあ、わかりやすくて面白いんですけど、本当にそれだけなんですよね。。。

農業関係には、こういうのが一冊あってもいいのになあ、と読んでみたのですが・・・なんだか読む前の印象以上の何かは得られませんね。

著者は男性ですが、きっと女性のほうがこんな視点なんじゃないのかなあ、と思ったり。

銘柄ごとのイラストの「それっぽさ」はすごい。





『お米は生きている―自然と人間』(富山和子/講談社)



「わたしたち日本人は、お米と大のなかよしです」



子供向けの、日本のお米についての本。
第42回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校高学年の部)。

「日本人とコメ」というテーマで、先史からのコメ作りと社会に与えた影響の紹介から、多面的機能、現代の農業・環境問題まで、幅広く扱っています。

「難しいことをわかりやすく」書いてある・・・と期待して読んだのですが、わかりやすいものの、難しいことが書いてあるかはちょっと疑問です。教育にとって重要なのは、日本の農業が大事であることを刷り込ませることではなく、自然に感じられるようにすることなのではないでしょうか、などと思ったり。

95年に初版。ガット・ウルグアイラウンド合意と同年ですから、そういう意図があったのでしょう。
なんだか、ね。